認知行動療法で「うつ思考」から抜け出す
「考え方の習慣」を改める注目の治療法、実施医療機関はまだ少数
稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
心の病気の治療法として、近年、注目を浴びている「認知行動療法」。ものの見方を変えて、こころのストレスを軽くしていく精神療法で海外では広く行われている。日本でも有効性は実証され、医療機関だけでなく、健康な労働者に対して企業で採用を検討しているところも増えてきた。認知行動療法とはどのような治療法か、効果や現状、課題について、認知行動療法の治療にも詳しい神田東クリニック(東京都千代田区)院長の高野知樹医師に聞いた。うつ病の第1回は「これって五月病!? GW明けは要注意」、第2回は「SSRI、SNRI、NaSSA…抗うつ薬はどれも同じ?」。

神田東クリニック(東京都千代田区)院長、日本産業精神保健学会理事、日本精神科産業医協会理事
Q 仕事のストレスでうつ病を発症して6カ月になります。抗うつ薬と睡眠薬を使用して少しずつ快方に向かっていますが、時々気持ちがひどく落ち込み、このまま治らないのではと不安になります。医師から「薬を続けながら、認知行動療法を試してみませんか」と勧められましたが、効果はあるのでしょうか。(50歳・男性)
A
うつ病に対する認知行動療法には、薬物療法と同じぐらいの効果があるといわれています。ただ、受けたその日からというような即効性はなく、継続的に行うことで効果が表れます。健康保険(公的医療保険)が適用される、医師による実施施設も少ないため、現時点ではどこでも受けられる治療法というわけではありません。
厚生労働省が中心となって体制を整えているところなので、将来的には実施施設が広がっていくかもしれません。なお、厳密には認知行動療法とは言わなくても、その手法を取り入れ、「考え方の習慣」に気付かせるような指導や助言は、多くの医療機関で日常診療の一環として行われています。