痔の基本治療は、薬と生活改善の2本立て
薬はあくまで対症療法、生活習慣の見直しが治療の中心に
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
痔は「手術で治す病気」というイメージを持つ人は多いが、医療機関での痔の治療は、薬物療法や生活改善などの保存療法が基本となる。坐薬や軟膏などの外用薬は、出血や痛み、腫れといった症状を抑え、排便の際の潤滑油としての役割を果たす。ただし、薬の効果は一時的。薬で症状を抑えながら、痔にならない生活習慣を身に着け、再発を防ぐことが重要だ。痔のエキスパートである、岩垂純一診療所(東京都中央区)所長の岩垂(いわだれ)純一医師に、薬や病院の選び方について聞いた。痔の第1回は「お尻のいぼ、放っておいても大丈夫?」、第3回は「痔を注射で治す『ALTA療法』の実力は?」で12月26日公開、第4回は「痔を予防する『お尻ケア』のススメ」で12月29日公開予定。

岩垂純一診療所(東京都中央区)所長、日本臨床肛門病学会理事長
Q 痔になったようで、出血があり、排便時にいぼのようなものが外に出るようになりました。排便後は自然に引っこみますが、少し痛みます。検査をするのに肛門に指を突っ込むと聞いて、病院に行くのをちゅうちょしています。市販薬で治せますか。(50歳・男性)
A
一言で痔の薬といっても、様々な種類があり、成分も違います。医師は症状と状態を見ながら、適切な薬を処方します。市販薬は手軽に買えるのですぐに治療を始められますが、薬の選択が適切かどうかは使ってみないとわかりません。
もし、忙しくて病院に行く時間がなかったり、検査に抵抗を感じたりしている場合は、軽度であればまず1週間、市販薬を試してもよいでしょう。その場合も、症状が改善されなければ病院で医師の診察を受けるようにしましょう。肛門から出血して、痔だと思って検査を受けたら、大腸がんによる出血だったということも少なくありません。痔であっても、処置が遅れると治りにくくなります。痔ろう(*1)の場合は、まれではありますががんに移行する危険性があります。
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