無意識のぼんやり、実は「てんかん」!?
自覚症状なし、周りの人が注意を
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
「てんかん」は、突然、意識を失ったり、けいれんするなどの発作を繰り返す慢性的な脳の病気。患者数は人口の約1%、100万人を超えるといわれ、その症状は転倒して倒れるものから短時間、脳の指令が届かなくなるものまで多岐に渡る。そのため、診断は難しく、誤った診断で適切な治療が行われていないケースも多い。てんかんの症状や検査について、てんかんに詳しい東北大学病院てんかん科科長で教授の中里信和医師に聞いた。てんかんの第2回は「てんかんは薬と手術で改善できる」で11月27日公開、第3回は「運転はできる?会社に言うべき?『てんかん』との上手な付き合い方」で12月1日公開予定。

東北大学大学院医学系研究科てんかん学分野 教授
Q 48歳の夫は、時々ぼーっとして一時的に意識が無くなったようになることがあります。時間にして10秒から30秒ぐらいの間で、また何事もなかったかのように再び元の動作に戻るのですが、明らかに不自然です。名前を呼ぶと、かろうじて問いかけには答えますが、意識は飛んでいるような感じです。本人は、ずっと意識はあった、ぼーっとしていた記憶はないと言っています。知り合いからてんかんの初期症状ではないかと言われたのですが、その可能性はありますか。意識が飛んだようになり始めたのは1年ほど前からなのですが、大人になってからてんかんになることはあるのでしょうか。(45歳・女性)
A
てんかん発作と言うと、突然転倒し、泡を吹いてけいれんを起こす状態をイメージする人が多いのですが、この状態はいわゆる「大発作」と呼ばれるもので、てんかんの症状として多くはありません。てんかんの症状として一番多く見られるのは、今まで行っていた動作を突然止めてぼーっとする、あるいは意識がないまま動き回るといった「複雑部分発作」という症状です。無意識の状態は1分以内、長いときで5分ぐらいは続くので、周囲は異変に気づきますが、本人は無意識なので発作を起こしていることに気付きません。その他、てんかん発作には大小いろいろなタイプがあります。
てんかんは乳幼児から思春期にかけての発症が全体の半数程度で、そのうちの約半数は大人になる前に治ります。一方、大人になってから発症する場合も少なくなく、子どものときに発症して治まったのに別のタイプのてんかんとして発症する場合と、大人になってからまったく新たに発症する場合とがあります。
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