歯周病は「歯を失う」だけでは済まない
歯周病菌が全身に影響、生活習慣病の悪化要因に
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
歯周病は日本人の330万人、中高年の8割がかかっている身近な病気。初期は症状が表れないことが多いため、歯がぐらついたときには手遅れとなり、歯を失う最も大きな原因となっている。また、歯周病の細菌が体全体に影響し、持病の生活習慣病を悪化させることも分かってきた。歯周病の原因やチェックの仕方について、歯周病に詳しい、東京医科歯科大学歯学部附属病院歯周病外来教授の和泉雄一医師に聞いた。歯周病の第2回は「歯を抜かずに治す、最新の歯周病治療」で11月7日公開、第3回は「歯周病を再発させないカギは『正しい歯磨き』と『定期健診』」で11月10日公開予定。

東京医科歯科大学歯学部附属病院 歯周病外来 教授
Q 家族から口臭を指摘されました。歯茎に歯ブラシを当てると出血し、歯も少しぐらぐらしています。ただ、今のところ痛みはなく、口の中に違和感がある程度です。歯周病だとしても軽度だと思うので、歯周病予防用の洗口液や歯磨きで朝晩、ケアしていますが、歯医者さんに行かずに治せますか。(45歳・男性)
A
歯周病の初期症状には、腫れ、むずがゆさ、歯磨きのときの出血、口臭などがあります。ご相談者はこれらに加え、歯がぐらぐらしているとのことですから、進行した歯周病である可能性があります。
歯周病は初期であれば、必ずしも歯科医院での治療は必要ありません。しかし、進行した歯周病の場合は、歯と歯茎の間に「歯周ポケット」という溝ができ、そこに歯周病菌が住みついている可能性があります。歯磨きや洗口液では、歯周ポケットの中でバイオフィルムを形成した歯周病菌を完全には除去・殺菌ができません。市販の歯周病予防用品を使ったオーラルケアの目的は、あくまでも予防です。まずは歯科医院で、歯周病菌の住み家となる歯周ポケット内の歯垢(プラークあるいはバイオフィルム)を除去することをお勧めします。