顔が引きつる、意に反して動く…慢性期の後遺症への対処法
根気よく治療を続けて悪化を防ぐ
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
顔面神経麻痺の発症から3~4カ月を経過すると、損傷の軽い神経線維の修復がほぼ完了し表情筋に到達する。顔が動かせるようになり麻痺が軽くなったと思って安心していると、顔面のこわばり、筋力低下、顔面拘縮など、様々な後遺症が現れてくる。これは、修復時に混線(迷入再生)した神経線維が、4カ月目以降に順次、表情筋に到達するためだ。誤って完成した神経回路に対しては,筋肉を麻痺させるボツリヌス毒素の注射(ボツリヌス治療)との併用で、徐々に顔面の機能を回復していくことが可能だという。顔面神経麻痺のリハビリ治療に詳しい帝京平成大学健康メディカル学部理学療法科教授で帝京大学医学部リハビリテーション科客員教授の栢森(かやもり)良二医師に、後遺症への対処のポイントについて聞いた。顔面神経麻痺の第1回は「突然、目や口が動かない! それは『顔面神経麻痺』かも」、第2回は「早期開始が決め手!顔面神経麻痺の急性期治療」。

帝京平成大学健康メディカル学部理学療法科教授、帝京大学医学部リハビリテーション科客員教授
Q 顔面神経麻痺と診断され、薬物治療を2週間受けて症状は治まったのですが、4カ月を過ぎた頃から、新たに顔の引きつりやこわばりがひどくなってきました。時々下まぶたがぴくぴくします。再発したのでしょうか。(42歳・男性)
A
一時的に症状が治まったのに、新たに顔の引きつりなどが表れたとのことから、神経線維の混線(迷入再生)が起こったと考えられます。修復された神経線維が4カ月後に間違った表情筋に到達してしまい、後遺症が表れ始めたのかもしれません。
顔面神経麻痺の発症から4カ月を経過すると、修復された顔面神経は固定化され、その場所から動かなくなります。突起のつながり先が混線して迷入再生が起きた場合、顔面のこわばり、筋力の低下、顔面拘縮、自分の意志とは違った動きが起こる「病的共同運動」、けいれんなど、様々な後遺症が出ることがあります。4カ月以降の慢性期にこれらの症状が出てきた場合は、症状が悪化しないよう、マッサージやストレッチなどにより根気良くリハビリテーションを続けます。最近では、ボツリヌス毒素を注射して筋肉の緊張を和らげる「ボツリヌス治療」も広く行われるようになりました。
なお、ご相談者の場合は再発ではなく後遺症だと考えられますが、顔面神経麻痺が再発することもあります。特に、持病として糖尿病がある人は再発率が高く、顔面神経麻痺以外にも様々な神経障害を引き起こしやすいことが知られています。