早期開始が決め手!顔面神経麻痺の急性期治療
薬物療法とリハビリが後遺症を防ぐ2本柱
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
ウイルス性の顔面神経麻痺の治療においては、神経障害の原因となっているウイルスの活動を抑えて神経圧迫を取り除く薬物治療と、麻痺した表情筋を回復させて後遺症を予防するリハビリテーションを同時並行で行う。神経の障害が進まないうちにできるだけ早く抗ウイルス薬を処方することにより、障害を最小限に抑えることができる。顔面神経麻痺の急性期の治療について、帝京平成大学健康メディカル学部理学療法科教授で帝京大学医学部リハビリテーション科客員教授の栢森(かやもり)良二医師に聞いた。顔面神経麻痺の第1回は「突然、目や口が動かない! それは『顔面神経麻痺』かも」、第3回は「顔が引きつる、意に反して動く…慢性期の後遺症への対処法」で10月17日公開予定。

帝京平成大学健康メディカル学部理学療法科教授,帝京大学医学部リハビリテーション科客員教授
Q 顔が歪んだような感じがあり、口から水が漏れるので驚いて病院を受診したところ、「顔面神経麻痺」と診断されました。すぐに入院するよう勧められましたが、仕事を休めません。入院しないと治療できないのでしょうか。何もしないでそのまま放置しておくと、どうなるのでしょうか。(50歳・男性)
A
顔面神経麻痺は、最初は「気のせいかな?」と思うぐらい軽い症状から始まります。そして、顔面神経の炎症と浮腫による圧迫で神経の障害が進み、2日目、3日目と次第に症状が悪化していきます。神経は自己修復するので、治療を受けなくても7割の人は元に戻りますが、3割の人には後遺症が残る場合があります。
ウイルスによって起こった顔面神経麻痺の場合、発症からできるだけ早い段階で抗ウイルス薬とステロイドで浮腫を軽減させる薬物療法を行い、神経の障害を最小限にすることが重要です。ご相談者の場合、入院を勧められたということですから、治療薬の点滴投与が必要な重症例と考えられます。重症例の治療では、発症から3~5日が重要な期間とされ、ここでしっかりと治療を受ければ麻痺が回復する可能性が高まります。
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