網膜を傷つける異常な血管を叩く「抗VEGF療法」
早期なら視力を回復できる例も
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
加齢黄斑変性と診断されても、早期であれば症状の改善や進行を抑えられる可能性が高い。けれども、老化が病気の原因である以上、症状をチェックしながら長期にわたって治療を続ける必要がある。近年、滲出型加齢黄斑変性の原因となる新生血管の増殖を抑える「抗VEGF薬」が開発され、眼球に定期的に注射する「抗VEGF療法」により長く視力を保てるケースが増えてきた。その一方で、高額な医療費という課題にも直面しているという。加齢黄斑変性の治療の現状と課題について、日本大学病院アイセンター長の島田宏之医師に聞いた。加齢黄斑変性の第1回は「急激な視力低下を招く『加齢黄斑変性』」、第3回は「まずは禁煙!加齢黄斑変性の予防法」で9月11日公開予定。

日本大学病院アイセンター長・教授
Q 視界が歪み、見ようとするところが見えにくいようになり、眼科を受診したところ、滲出型の加齢黄斑変性と診断されました。眼球に注射する「抗VEGF療法」を勧められましたが、どのような治療で、いつまで続ければよいのでしょうか。この治療を行えば、視力が回復するのでしょうか。(60歳・女性)
A 滲出型の加齢黄斑変性の治療は、新生血管の増殖をいかに食い止めるかがポイントです。抗VEGF療法は、新生血管の発生を促す物質「VEGF」を阻害する「抗VEGF薬」を使い、新生血管の増殖を抑える治療法です。原則として月に1回、眼球に抗VEGF薬を注射します。残念ながら、視覚障害がある程度進んでしまっている場合、元通りに回復することはできません。しかしながら、治療を継続することで、病気の進行を抑えて視力の低下を遅らせることができます。