すぐに治療を!飛蚊症の裏に潜む「網膜裂孔・剥離」
けがだけでなく加齢も原因に、裂孔の段階で手を打つことが肝要
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
網膜は目の奥に広がる薄い神経の膜で、物を見る上で重要な役割を果たしている。この膜に穴が開いたり亀裂が入るのが「網膜裂孔」、剥がれてしまうと「網膜剥離」となる。網膜剥離はボクサーのように目に強いダメージを受けることで起こるものというイメージがあるが、加齢も大きな要因で、特に50歳以降は注意が必要だ。網膜剥離やその前段階である網膜裂孔が起こるメカニズムと治療法について、西葛西・井上眼科病院(東京都江戸川区)院長の井上順治医師に聞いた。飛蚊症の第1回は「『危険な飛蚊症』の見分け方」、第3回は「気になる飛蚊症をなんとかしたい!」で8月21日公開予定。

西葛西・井上眼科病院(東京都江戸川区) 院長
Q 飛蚊症は以前からあったのですが、急にひどくなったので眼科で検査したところ、網膜に穴が開いていると言われました。このまま放っておくと、網膜剥離に進行するかもしれないとのこと。目をぶつけた覚えもないのに、網膜に穴が開いたのはなぜなのでしょうか。穴が開いたまま放置しておくと、自然に剥がれてしまうのでしょうか。(52歳・男性)
A 網膜に穴が開く「網膜裂孔」や網膜が剥がれる「網膜剥離」の原因は、若い人と中高年者とでは異なります。若いときにはスポーツなどによる外傷や、強度の近視が原因となることが多いのですが、50歳を過ぎてから起こる網膜裂孔・剥離の原因のほとんどは、加齢による後部硝子体剥離です。硝子体が網膜から剥がれること自体は生理的な変化であり、症状も飛蚊症を生じる程度で視力などに影響はないのですが、硝子体の一部が網膜に癒着していて、一緒に引っ張られることで網膜に穴が開き、剥がれると、飛蚊症を生じるだけでなく視野が欠けたり視力が低下したりします。網膜裂孔の一部は、網膜剥離に進行します。網膜裂孔の段階であれば、瞳孔からレーザー光を照射して網膜を焼き付け、剥離への進行を食い止めることができます。