長引く胃の不調、治療の第一歩は「説明と保証」から
医師とのコミュニケーションがカギに
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
機能性ディスペプシア(FD)の治療では、食習慣の見直しなどの生活改善が重要。医師や栄養士による科学的で客観的な生活指導が、極めて有用だ。日々の積み重ねで確実に治す、そのためには信頼の置ける医師と良好な関係を築くことが大切だという。機能性消化管障害の研究や診療に詳しい、慶應義塾大学医学部医学教育統轄センター教授の鈴木秀和医師に、機能性ディスペプシアの治療のポイントについて聞いた。機能性ディスペプシアの第1回は「原因不明の胃の不調『機能性ディスペプシア』とは」、第3回は「治療薬は『みぞおち痛タイプ』か『胃もたれタイプ』かで使い分ける」で8月11日公開予定。

慶應義塾大学医学部医学教育統轄センター 教授
Q 仕事上の付き合いやストレスが重なり、暴飲暴食する生活が続いたためか、時々、胃がきりきり痛みます。忙しいので、病院には行かずに市販の胃腸薬をいろいろ飲んでいますが、一時的には治まるものの、またすぐに痛くなり完全には治りません。病院できちんと診てもらおうと思っていますが、どのような検査や治療をするのでしょうか。(50歳・男性)
A
病院では、まず問診を行い、どんな症状が出ているかを聴取します。胃もたれやみぞおちの痛みといった、胃炎でよくみられる症状がある場合は、内視鏡検査で腫瘍や潰瘍などの病変の有無を調べます。そうした器質的疾患(*1)がないにもかかわらず、胃痛などの症状が出ている場合は、胃や十二指腸など上部消化管の機能に不具合があるためと考え、機能性ディスペプシアと診断します。
医師は、機能性ディスペプシアの患者さんに対し、みぞおちの痛みなどのつらい症状は上部消化管の機能の変調により起こっていることと、命に関わる病気ではないということをはっきりと説明し、この病気を、患者さんと相談しながらきちんと治療していくことを保証します。機能性ディスペプシアの場合、この「説明と保証」を通じて医師と患者に信頼関係が構築され、不安や心配から解放されることにより、それだけでも3割くらいの人が快方に向かうともいわれています。機能性ディスペプシアの治療は、長期にわたることも少なくありません。治療を前向きに続けるために、信頼のおける医師とのコミュニケーションは一番重要なのです。
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