原因不明の胃の不調「機能性ディスペプシア」とは
つらい胃もたれ、みぞおちの痛みの診療が変わる
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
胃の不調が続くにもかかわらず、画像診断や血液検査では異常がみられない「機能性ディスペプシア」。食生活の変化や社会生活で受けるストレスの増加により、人口の約2割が慢性的に胃腸の不快症状を抱えているという。最近まで「神経性胃炎」「ストレス性胃炎」「慢性胃炎」といわれた原因不明の胃の不調には、「機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)」という病名が付けられ、診断法も確立されつつある。機能性消化管障害の国際的な診断基準を決めるRome委員会の委員でもある、慶應義塾大学医学部医学教育統轄センター教授の鈴木秀和医師に、機能性ディスペプシアの診断法について聞いた。機能性ディスペプシアの第2回は「長引く胃の不調、治療の第一歩は『説明と保証』から」で8月7日公開、第3回は「治療薬は『みぞおち痛タイプ』か『胃もたれタイプ』かで使い分ける」で8月11日公開予定。

慶應義塾大学医学部医学教育統轄センター 教授
Q 半年ぐらい前から、時々胃がもたれます。市販の胃腸薬で一時的には治まりますが、食欲もなくなり、食べても消化不良を起こしているようで食後は痛みも伴います。内視鏡の検査を受けましたが、これといった異常は見つからず、「機能性ディスペプシア」と診断されました。聞き慣れない病名で、医師からの説明も曖昧でよく分かりませんでした。どういう病気ですか。(35歳・女性)
A 胃の痛みやもたれなどの不快な症状がありながら、原因となる、目に見える異常が確認できないことがあります。原因不明の胃の不調はかつて「慢性胃炎」と診断されることがほとんどでした。「機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)」とは、目に見える異常はないけれど、症状はあるという慢性的な胃の疾患を指す病名(診断名)です。2013年に、この診断名での診療に対して、健康保険(公的医療保険)が使えるようになりました。原因ははっきりと分かっていませんが、脳と腸をつないでいる自律神経や消化管の運動異常、知覚過敏、食生活の乱れ、ストレスなど、様々な要因により症状が表れると考えられています。
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