その痛み、本当に神経痛?
正しい診断と的確な治療を受けるには
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
高齢者に多く、600万人超が悩まされている神経痛。正式には「神経障害性疼痛」と呼び、病気やケガなど、何らかの原因で神経に障害が残ったことにより、痛みが慢性化した状態を指す。代表的なものには、坐骨神経痛、帯状疱疹後神経痛、糖尿病神経障害、三叉神経痛などがあり、薬物療法などの進歩により多くは痛みを和らげることができるようになってきた。
その一方で、筋筋膜性疼痛や副鼻腔炎など、他の疾患による痛みが「神経痛」と誤って診断され、適切な治療がなされていないケースもみられるという。神経障害性疼痛を正しく診断するために欠かせない診察内容について、東京慈恵会医科大学附属病院ペインクリニック診療部長の北原雅樹医師に聞いた。神経痛の第2回は「神経痛の薬、効果は?副作用は?」で7月12日公開、第3回は「長引く痛みの克服につながる、ペインクリニックでの治療」で7月14日公開予定。

東京慈恵会医科大学附属病院 ペインクリニック診療部長
Q 10年以上前から坐骨神経痛を抱えていて、痛みがだんだんひどくなっています。かかりつけの先生に神経痛の薬を処方してもらっていますが、痛みは治まりません。最近は、歩くのもつらくなってきました。このままずっとこの痛みが続くと思うと、不安で夜も眠れません。根本的に治す方法はあるのでしょうか。(73歳・女性)
A
神経痛(神経障害性疼痛)には、(1)神経が走っている領域に一致して痛みがある、(2)神経の損傷や炎症などを起こした原因が思い当たるか原因がある―という2つの特徴があります。長引く慢性の痛みは、すべて神経痛だと思っている方が多いのですが、「神経痛なのですが」と当院を受診する患者さんの7割は神経痛ではありません。不十分な検査で誤って神経痛と診断され、本当の病気の治療が行われず、痛みが続くことも多いのです。
ご相談者の場合、まずは坐骨神経痛という診断が正しいかどうか、ペインクリニック科や神経内科など神経痛を専門とする診療科で調べてもらうことをお勧めします。神経痛は、長く患っている場合、痛みをゼロにすることは難しいかもしれません。ですが、薬物療法だけでなく、理学療法や心理療法(認知行動療法、自律訓練法など)といった様々な治療法を併用することで痛みを軽減できると思います。