熱中症予防に塩分補給は必要?
予防の基本は食事、睡眠、運動。水分の半分は食事から
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
今年(2016年)は例年より夏日の到来が早く、5月の段階で熱中症による救急搬送数が昨年を大きく上回った。夏も猛暑が予想されており、熱中症対策が一層重要になる。地球温暖化やヒートアイランド現象の影響で、炎天下で運動や仕事をしている人達だけでなく日常生活の中でも発生している熱中症は、今や誰もがかかる可能性がある病気だ。熱中症を確実に防ぐためのポイントを、熱中症に関する啓発活動を行っている済生会横浜市東部病院(横浜市鶴見区)周術期支援センター長の谷口英喜医師に聞いた。熱中症の第2回は「熱中症の背後にひそむ『脱水症』のサインを見逃すな!」で7月5日公開、第3回は「熱中症対策に必携!『経口補水液』で脱水からスピード回復」で7月7日公開予定。

済生会横浜市東部病院(横浜市鶴見区)周術期支援センター長
Q 健康のためにジョギングをしていて、炎天下を走ることもよくあります。ジョギングの際は水分補給のためスポーツドリンクを携帯していますが、熱中症を予防するためには塩分の補給も必要だと聞きます。普段の食事から、塩分を多めにしておく方がよいでしょうか。(55歳・男性)
A 日本人の平均的な塩分摂取量は1日約10gで、これくらいの量が毎日の食事の中で十分とれているのであれば、熱中症予防のために日常的な食事で塩分を積極的にとる必要はありません。ウォーキングや軽いジョギングで少量の汗をかいたときは、再吸収(*1)されるので問題ありません。ただし、着替えが必要なほど大量の汗をかいたときは、塩分補給が必要です。高齢者の場合は少しの汗でも早めの補給が必要です。ただ、脱水症状があるときに塩分をとり過ぎると、血液中の塩分濃度が高くなり、「高ナトリウム血症」を起こして心不全、呼吸不全を起こすこともあるのでかえって危険です。塩だけを摂取するのではなく、適度な水分と塩分を含んだイオン飲料、できれば経口補水液を飲むと良いでしょう