注射による「筋膜リリース」で肩こり治療
生理食塩水を注入して筋膜の癒着をはがす
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
筋膜とは、筋肉や内臓を覆っている膜。慢性の痛みの多くに、この筋膜が関係しているということが分かり、近年注目されている。「筋膜リリース」は「筋膜をはがす」という意味の治療法。リハビリテーションや鍼灸の施術者には知られていた概念だが、最近、超音波診断装置(エコー)で筋膜を映し出しながら、食塩水を注射するという「エコーガイド下筋膜リリース」が整形外科などで実施されるようになっている。どのような治療法なのか、エコーガイド下筋膜リリースによる肩こり治療を行っている、いがらし整形外科スパインクリニック(東京都渋谷区)院長の五十嵐環医師に方法と効果について聞いた。肩こりの第1回は「つらい肩こり、原因は『トリガーポイント』にある?」、第2回は「こりや痛みを効果的に抑える『注射療法』とは」。

いがらし整形外科スパインクリニック(東京都渋谷区)院長
Q 肩こりに20年以上悩んでいます。いろいろな治療法を試してみましたが、効果は一時的で、最近はこりだけでなくしびれや疲れも感じるようになりました。テレビで観た「エコーガイド下筋膜リリース」は、食塩水を注射して肩こりを治すという画期的な治療ということで、気になっています。どのような治療法ですか。(44歳・女性)
A 筋肉などの周囲には「筋膜」という膜があるのですが、それが筋肉と癒着して厚くなったり、硬くなったりしたところに、痛みの発生源となる「トリガーポイント」が形成されます。このトリガーポイントから起こる痛みの治療法として、「筋膜リリース」が有効であるということが分かってきました。筋膜が癒着して厚くなっている部分には、トリガーポイントが高い確率で存在するのですが、超音波診断装置(エコー)を使うと筋膜の癒着部位が正確に把握できます。そこに注射針を刺して生理食塩水を注入し、癒着した筋膜をはがす(リリースする)と、痛みが軽減するのです。針を刺す場所をエコーで確認しながら施術するので、「エコーガイド下筋膜リリース」と呼ばれています。