つらい肩こり、原因は「トリガーポイント」にある?
筋肉の損傷、筋膜の癒着で「痛みの発生源」が生まれる
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査」によると、日本国内で「肩こり」の自覚症状がある人は約1200万人。運動不足、ストレス、パソコンを使って同じ姿勢で仕事をするといった生活スタイルの変化で、肩こりで悩む人は年代を問わず増えている。一言で「肩こり」といっても、いろいろな症状があり、痛みの原因によって治療法も変わる。肩こり治療を様々な方法で行っている、いがらし整形外科スパインクリニック(東京都渋谷区)院長の五十嵐環医師に、肩こりの医学的なアプローチについて聞いた。肩こりの第2回は「こりや痛みを効果的に抑える『注射療法』とは」で5月5日公開、 第3回は「注射による『筋膜リリース』で肩こり治療」で5月8日公開予定。

いがらし整形外科スパインクリニック(東京都渋谷区)院長
Q 若い頃から肩こりがひどくて、マッサージや鍼灸で一時的には良くなりますが、最近は痛みだけでなく手のしびれも感じるようになり、仕事にも集中できません。肩こりで病院にかかったことはありませんが、医療機関ではどのような診察や治療が行われるのでしょうか。(48歳・女性)
A 「肩こり」という病名はなく、肩の痛みや肩の痛みからくるしびれが生じたときは、医療機関では「頸肩腕症候群」(*1)、「頸椎椎間関節症」(*2)、「頸椎症性神経根症」(*3)、「筋膜性疼痛症候群」(*4)などの診断名がつきます。どれも、軽症の場合は自然治癒することが多いのですが、慢性化して治りづらくなることもあります。経験の多い医師の場合、問診と、腕などを動かしたり患部周辺を押したりして痛みの有無や変化をみる「理学検査」を行うことで、肩こり症状の原因を判断できます。それでも原因が分からない場合はレントゲン検査やMRI検査などで画像診断を行います。痛みの原因を突き止め、運動療法、温熱療法、鎮痛薬やブロック注射などの薬物療法、手術など、原因に合わせた治療を行います。痛みが長引く場合、肺がんや神経腫瘍などの病気の可能性もありますので、一度は専門の医療機関で診察を受けることをお勧めします。
(*2)頸椎椎間関節症:頸椎(首の骨) の椎間関節に痛みが起こる
(*3)頸椎症性神経根症:頸椎症(首の骨や関節などの変形)による神経根症。首の神経に問題が生じたことで、肩から腕に痛みが生じたり、腕や手指のしびれなどが起こる
(*4)筋膜性疼痛症候群:筋肉に生じたトリガーポイントが原因となり痛みやしびれが起こる