こんなに変わった!C型肝炎の治療戦略
副作用の少ない経口薬の登場で「早期治療」が本流に
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
C型肝炎ウイルス(HCV)に持続的に感染していると、高い確率で肝炎が慢性化して、その後、肝硬変へ進展し、肝がんを引き起こす。C型肝炎の治療の目的は肝がんの発生を防ぐためであり、「抗ウイルス療法」でHCVを排除することが第一目標となる。1992年から開始されたインターフェロン(*1)療法は、2004年にはペグインターフェロン療法へと進化を遂げ、薬剤の作用時間が長くなったことで週1回の注射で済むようになった。現在ではそれに代わり、高い抗ウイルス効果を持ち、副作用が少ない「直接作用型抗ウイルス薬」(DAAs:direct-acting antiviral agents)という飲み薬が治療の基本となっている。大きく変わったC型肝炎の治療法について、武蔵野赤十字病院(東京都武蔵野市)副院長の泉並木医師に聞いた。C型肝炎の第1回は「C型肝炎ウイルス、半数は感染源不明」、第3回は「C型肝炎ウイルスを撃退する『特効薬』DAAsの実力は」で5月15日公開予定。

武蔵野赤十字病院(東京都武蔵野市) 副院長 消化器部長
Q 10年前にC型肝炎と診断されたのですが、肝機能が正常だったため、かかりつけの先生から「急いで治療をしなくてもよい」と言われました。今は定期的に検査を受けており、肝機能はずっと正常範囲のままです。ここ数年、C型肝炎ウイルスを除去するための良い薬が出てきているということをニュースで見て気になっているのですが、治療を始めた方がよいでしょうか。(43歳・男性)
A C型肝炎は、以前は肝機能が低下してから治療を始めるという考え方が主流だったのですが、最近は、肝機能に異常がなくても肝臓が硬くなる「線維化」が進んでいるケースがあることが分かってきました。そのまま放置すると、肝硬変や肝がんの発症につながる恐れがあります。近年、登場した経口薬(DAAs)は、治療の成功率が高く副作用も少ないため、現在ではC型肝炎ウイルスへの感染が分かったら、肝機能が正常であっても積極的にウイルスを除去する治療を行うという流れになっています。薬の処方には専門知識を要するため、必ず肝臓専門医を受診するようにしましょう。
この記事の概要
