C型肝炎ウイルス、半数は感染源不明
じわじわと進行するサイレントキラー、感染の心当たりがなくてもウイルス検査を
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
1989 年にウイルスが発見されたC型肝炎は、慢性肝炎の7割を占める、国内で最も多いウイルス性肝炎。血液を介して感染するため、輸血や血液製剤、注射針の使い回しなどにより一時は感染が拡大したが、検査法や治療技術の進歩で患者数は減少に向かっている。現在国内でのC型肝炎ウイルスの感染者数は約120万人、うち治療を受けた人は40~50万人で、約70万人が未治療のままだという。
C型肝炎ウイルスに一度感染すると、約60~80%と高い確率で慢性肝炎へと移行し、そのまま肝硬変や肝がんへと進展することが少なくない。C型肝炎ウイルスの感染経路や感染した場合の症状について、国内の肝炎診療ガイドライン作成の中心メンバーでもある武蔵野赤十字病院(東京都武蔵野市)副院長の泉並木医師に聞いた。C型肝炎の第2回は「こんなに変わった!C型肝炎の治療戦略」で5月12日公開、第3回は「C型肝炎ウイルスを撃退する『特効薬』DAAsの実力は」で5月15日公開予定。

武蔵野赤十字病院(東京都武蔵野市) 副院長 消化器部長
Q C型肝炎のウイルス検査で、HCV抗体が「陽性」と出ました。家族には感染者はいません。私は手術での輸血経験もなく、感染経路に全く心当たりがないのですが、どうして感染したのでしょうか?(35歳・女性)
A
C型肝炎ウイルス(HCV)への感染は、HCVに感染した人の血液が自分の血液に入ることによって起こります。主な原因は過去の輸血や血液製剤の投与ですが、適切な消毒をしない器具を使っての医療行為のほか、ピアスの穴をあける器具やタトゥー・入れ墨を入れる針、カミソリ、歯ブラシなどが、HCV感染者と共用されていた場合にも感染は起こり得ます。感染者と同じ注射器を使って麻薬や覚せい剤を回し打ちすることも感染につながります。
なお、検査法が定まっていなかった1992年2月以前に輸血を受けた人は、特に感染の可能性があります。出産時の母子感染や性交渉による感染はごくまれですが、ゼロではありません。ただ、感染者の半数以上は、どこから感染したのか分かっていないのが現状です。