慢性の耳鳴りを軽くする「呼吸法」とは
呼吸を通じたストレスコントロールで耳鳴りの7割が改善
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
耳鳴りには、睡眠不足と疲労、そしてストレスが大きく関わっている。その改善には、自律神経を安定させ、緊張をほぐし、ストレスをいかにコントロールするかが重要なポイントだ。ストレスのコントロールには、横隔膜をゆっくり動かして深く長い息を吐く「腹式呼吸」が有効で、実際に耳鳴りを改善する効果が得られているという。ヨガインストラクターでもあるJCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長の石井正則医師に、耳鳴りの改善につながる呼吸法について聞いた。難聴・耳鳴りの第1回は「早ければ30代後半から始まる『加齢性難聴』」、第2回は「いきなり襲いかかる『突発性難聴』は初期対応が肝心」、第3回は「女性に増える『低音の耳鳴り』の正体は?」

JCHO東京新宿メディカルセンター 耳鼻咽喉科診療部長
Q 耳鳴りがするようになってから10年になります。MRI検査もしましたが、異常がみられませんでした。いろいろな治療を受けましたが、今一つ効果がありません。聴力も下がってきているような気がします。生活習慣を変えることで、少しでも改善できるのなら試してみたいのですが、よい方法はありますか。(45歳・女性)
A 慢性の耳鳴りがある人では、社会生活の中の過度のストレスで自律神経のバランスを崩したことが、悪化要因になっていることがよくあります。ストレスを抱えて緊張状態にある患者さんは、無意識のうちに、息の浅い胸式呼吸をしています。肺とお腹の間にある横隔膜(おうかくまく)をゆっくり動かして吐く腹式呼吸に変えることで心と体のバランスを保ち、耳鳴りを改善できることが分かってきました。こうした呼吸法のほか、食生活の改善、運動、気持ちを切り替えるトレーニングなどを通じてストレスのセルフコントロールができるようになれば、耳鳴りは快方に向かうでしょう。