女性に増える「低音の耳鳴り」の正体は?
突然の「耳詰まり感」で始まる蝸牛型メニエール病、主因はストレス
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
国内で慢性的な耳鳴りに悩んでいる人は推定300万人。耳鳴りの症状を訴える人は確実に増えている。多くは加齢性難聴から来る、高音のキーンと感じる耳鳴りだが、最近増えているのが「低音の耳鳴り」だ。その多くは、飛行機の離陸時や新幹線のトンネルを抜けたときに感じる、耳が詰まったような感覚(耳閉感)を伴い、特に若い女性に多いという。低音の耳鳴りの原因や治療法、慢性の耳鳴りに対するセルフケアについて、耳鳴り治療に詳しいJCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長の石井正則医師に聞いた。難聴・耳鳴りの第1回は「早ければ30代後半から始まる『加齢性難聴』」、第2回は「いきなり襲いかかる『突発性難聴』は初期対応が肝心」、第4回は「慢性の耳鳴りを軽くする『呼吸法』とは」で4月5日公開予定。

JCHO東京新宿メディカルセンター 耳鼻咽喉科診療部長
Q 耳の中でいつもゴーっという低い音が鳴っています。静かな場所だと特に気になり、夜も寝られません。原因は何ですか。(40歳・女性)
A 耳鳴りは、音の高低や強弱に違いこそありますが、誰にでも起こります。最近、加齢が原因ではない、低音の耳鳴りで悩む患者さんが増えています。低音の耳鳴りの多くは、「低音障害型感音難聴(低音部型難聴)に起因します。低音障害型感音難聴の80%は、内耳(ないじ)にあり聴覚を担っている蝸牛(かぎゅう)という器官にむくみが見られることから、内耳のむくみ(内リンパ水腫)を特徴とするメニエール病の前段階である「蝸牛型メニエール病」とも呼ばれています。寝不足やストレスで自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れて、不安定な状態になると耳鳴りが起こることが多いようです。