いきなり襲いかかる「突発性難聴」は初期対応が肝心
「発症から2日以内」の治療開始が聴力回復の鍵
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
「突発性難聴」は、突然、耳が聞こえにくくなる病気で、患者数は年間3~4万人といわれている。原因として、(1)内耳に血液を送る動脈で起きた血流の循環障害、(2)聴神経へのウイルス感染─という2つの説があるが、はっきりとは解明されていない。分かっていることは、早期に治療を開始しないと確実に聴力を回復させられないということだ。突発性難聴の症状や治療法について、難聴治療のエキスパートであるJCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長の石井正則医師に聞いた。難聴・耳鳴りの第1回は「早ければ30代後半から始まる『加齢性難聴』」、第3回は「女性に増える『低音の耳鳴り』の正体は?」で4月3日公開、第4回は「慢性の耳鳴りを軽くする『呼吸法』とは」で4月5日公開予定。

JCHO東京新宿メディカルセンター 耳鼻咽喉科診療部長
Q 1カ月ほど前、朝、起きたら、片方の耳に水が詰まったような違和感を覚えたのですが、そのままにしてしまいました。その後、耳鳴りやめまいが起こるようになったため耳鼻科を受診したところ、「突発性難聴」と診断されました。薬を飲んでめまいは治まりましたが、耳鳴りと聞こえづらい症状は回復していません。もう治らないのでしょうか。(25歳・男性)
A 突発性難聴には、「3分の1セオリー」というものがあります。聴力は3分の1の人で元通りに回復しますが、3分の1は改善はするが症状が残り、残りの3分の1は改善しないという結果が統計的に出ています。聴力を回復させるためには、できる限り早く適切な治療を始めることが重要で、突発性難聴の発症から2日以内に適切な治療を受ければ、多くの場合、聴力の回復が見込めます。治療開始までのデッドラインは2週間とされ、ご相談者のように発症から1カ月以上経ってしまった場合は、残念ながら聴力を元通りに治すことに期待は持てないと思われます。