早ければ30代後半から始まる「加齢性難聴」
メタボで耳が遠くなる!? 進行を遅らせる生活改善法とは
聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
年をとるにつれて耳が聞こえづらくなる「加齢性難聴」。全国の難聴者数の推計は、65歳以上で1500万人を超える。聴力の低下は20代から始まり、一般には50代で自覚症状が表れるが、生活に支障が出始めるのは高齢になってから。その意味で、加齢性難聴は誰もがいずれは直面する老化現象といえる。ところが最近は、早い人では30代後半で加齢性難聴を発症したり、50代でいきなり難聴の進行が早まる人が増えているという。
加齢性難聴を、早期に発症する原因は何か。発症や進行を遅らせることはできるのだろうか。加齢性難聴の発症メカニズムや進行を遅らせる生活改善法などについて、難聴治療のエキスパートであるJCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長の石井正則医師に聞いた。難聴・耳鳴りの第2回は「いきなり襲いかかる『突発性難聴』は初期対応が肝心」で3月31日公開、第3回は「女性に増える『低音の耳鳴り』の正体は?」で4月3日公開、第4回は「慢性の耳鳴りを軽くする『呼吸法』とは」で4月5日公開予定。

JCHO東京新宿メディカルセンター 耳鼻咽喉科診療部長
Q 最近、会議の時に、離れた席の人の話が聞きとりづらくなってきました。ときどき、キーンという耳鳴りも起こります。病院で検査をしたところ、「年を取ると誰でも耳は遠くなりますが、年齢の割に聴力の低下が早いようですね」と言われてしまいました。まだ40代、難聴になるような年ではないと思うのですが、聴力が低下してきている原因は何でしょうか。(46歳・男性)
A 年齢を重ねるにつれ、内耳(ないじ)の機能が衰えることで音が聞きづらくなった状態を「加齢性難聴」と呼びます。初期には高音域が聞き取りにくくなり、やがて中音域、低音域へと聞き取りにくい音域が広がっていきます。キーンという高音の耳鳴りを伴うこともあります。加齢性難聴は高齢者に起こると思われていますが、老化の速度は遺伝的要因や環境によって個人差があります。最近、30代後半や40代でも、加齢性難聴を発症する人が増えてきました。発症が早まる要因として、動脈硬化が深く関係していることが分かってきています。
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