アトピー治療の基本薬「ステロイド剤」は怖くない
「プロアクティブ療法」で、正しく使って確実に治す
稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
アトピー性皮膚炎の治療薬といえば「ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)」。ステロイドは人間の副腎皮質から分泌されるホルモンで、ステロイド剤にはこのホルモンと同じ効果があり、炎症を抑える作用では抜きん出て優れた薬だ。けれども、アトピー性皮膚炎の治療においては、「ステロイド剤は副作用が怖い」という誤解が蔓延して、正しい使用法を理解しないまま拒否反応を示して治療が進まないケースも少なくない。ステロイド剤の副作用と正しく使った場合の安全性について、東邦大学大橋病院皮膚科教授の向井秀樹医師に聞いた。アトピー性皮膚炎の第1回は「いきなり発症! 増えている『大人のアトピー』」、第3回は「重症アトピー治療の切り札、免疫抑制剤と分子標的薬」で3月27日公開予定。

東邦大学医療センター大橋病院皮膚科教授
Q 皮膚科でアトピー性皮膚炎と言われ、ステロイドの塗り薬を処方されました。ステロイドには顔や体が太ってきたり、赤黒くなったりする副作用があると聞いたことがあり、できる限り使いたくありません。ある程度使用して症状が改善してきたら、途中で使用をやめても大丈夫でしょうか。(38歳・男性)
A
ステロイドで肥満や糖尿病などの全身的な副作用が起きるのは、強いランク(*1)の薬を長期間、大量に使い続けた場合であり、そのほとんどが内服薬によるものです。皮膚科の外用薬による局所的な副作用に関しては、適切な対応で改善しますので医師に相談してください。まずは処方されたステロイド剤を指示通りに使い、炎症を完全に治して、皮膚本来のバリア機能を正常に戻すことが重要です。自己判断で薬を中断すると、かえって悪化することもあります。
皮膚科医は診療ガイドラインに基づいてステロイド剤を使用していますので、安心して医師の指示に従うようにしてください。