いきなり発症! 増えている「大人のアトピー」
アレルギーマーチに陥らないための対策とは
稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
皮膚に湿疹ができ、激しいかゆみを伴うアトピー性皮膚炎は、皮膚科に通院する理由として一番多い疾患だ。アレルギー性鼻炎や気管支喘息、花粉症などと同様に、アレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)を持つ人であれば、誰でも発症する可能性がある。以前は乳児期に発症し思春期までに治ることが多かったが、最近では大人になっても症状が続いたり、大人になってからいきなり発症して慢性化したり重症化するケースも増えているという。
今までアレルギーがなかった人でも、アトピー性皮膚炎をきっかけに、次から次へとアレルギーを発症する「アレルギーマーチ」を引き起こしかねない。アトピー性皮膚炎の重症例を数多く治療している、東邦大学大橋病院皮膚科教授の向井秀樹医師に、アトピー性皮膚炎の発症原因や対処法について聞いた。アトピー性皮膚炎の第2回は「アトピー治療の基本薬『ステロイド剤』は怖くない」で3月24日公開、第3回は「重症アトピー治療の切り札、免疫抑制剤と分子標的薬」で3月27日公開予定。

東邦大学医療センター大橋病院皮膚科教授
Q 昨年、突然、花粉症になり、鼻炎と目のかゆみに悩まされましたが、今年はさらに顔もかゆくなり、赤くなってカサカサしてきました。皮膚科を受診したところ、「アトピー性皮膚炎」と診断されました。今までアレルギーとは無縁だったのに、大人になってから花粉症やアトピー性皮膚炎を発症したのはどうしてでしょうか。(45歳・男性)
A
アトピー性皮膚炎は、アレルギーによって発症する、かゆみを伴う湿疹です。肌のバリア機能(異物などの体内への侵入を防ぐ機能)が崩れると、ダニやほこり、花粉などのアレルゲン(アレルギー反応を起こす抗原)が皮膚から侵入しやすくなります。アレルゲンが皮膚から侵入すると、体内にアレルギーに関わる物質(IgE抗体、*1)が作られます。特定のアレルゲンに対するIgE抗体が作られた後に、同じアレルゲンが体内に入ると、鼻ならアレルギー性鼻炎、皮膚からだとアトピー性皮膚炎、口からだと気管支喘息というように、アレルゲンの侵入部位に応じたアレルギー症状が表れます。
ご相談者が既に昨年、花粉症を発症していたということは、少なくとも花粉に対するIgE抗体が作られていると考えられます。今年は、皮膚からも花粉やそれ以外のアレルゲンが侵入し、花粉症に加えアトピー性皮膚炎の症状が表れたものと思われます。アトピー性皮膚炎は、以前は小児の代表的な疾患であり、思春期までに治る「子どもの病気」でした。しかし近年は、環境の変化やストレスの増加など、たくさんの要因が絡み合って、大人になってから発症するケースが増えています。