忘年会のシーズンが迫ってきた。ついつい深酒し二日酔いに苦しめられた人は少なくないだろう。翌朝、同じように飲んだ同僚はさわやかな顔でテキパキ仕事に励んでいるのに、自分だけが具合が悪いのはなんともバツが悪い。そもそも二日酔いはなぜ起こるか、お酒の強い、弱いの個人差があるのはなぜだろうか。
二日酔い最大の原因はアセトアルデヒド

朝起きると激しい頭痛、吐き気、倦怠感…。「あんなに飲むんじゃなかった…」と後悔しても後の祭り。そんなつらい二日酔いの症状はどのようにして起こるのか。
「実は、二日酔いのメカニズムについては、まだわからないことが多いのです。原因は一つではなく、様々な要因が絡み合っています」と話すのは、社員から二日酔いの相談を受けることもある、三菱UFJニコスで産業医を務める中野里美さん。
いくつかある原因の中の一つが、アルコールが体の中で代謝されてできる「アセトアルデヒド」という物質だ。「アセトアルデヒドは毒性の強い物質で、血液中の濃度が高くなると、顔が赤くなったり、動悸、吐き気、眠気、頭痛などの症状を引き起こします。飲んだアルコールの量が多くなるほどたくさんのアセトアルデヒドができ、二日酔いになりやすくなります」と、医師で薬局経営者でもある狭間研至さんは話す。
実はお酒に強い人と弱い人の差も、このアセトアルデヒドが大きく関係する。体に入ったアルコールの約9割は肝臓で代謝されるが、そこでアルコールはADH(アルコール脱水素酵素)によりアセトアルデヒドになり、その後ALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素)の働きで無毒な酢酸になって肝臓から排出される。
「実はALDH2は遺伝子型によって決まる3つのタイプがあり、働きの強さが違います。普通に働く活性型、活性型に比べて働きが弱い低活性型、全く働かない非活性型です。日本人の場合、1割弱が非活性型、3割強が低活性型。ほとんどの人が活性型の欧米人に比べお酒に弱い人が多いのはこのためです」と狭間さん。いわゆるまったく飲めない下戸の人は非活性型。また、ビールコップ1杯程度の飲酒でも顔が赤くなったり動悸がするようなら低活性型だ。「ちなみに、低活性型や非活性型の人は、飲酒により食道やのどの発がんリスクが高まるので注意が必要です」(狭間さん)。
自分が活性型かそうでないかが簡単にわかる方法もある。「薬局で売られている消毒用アルコール(70%エタノール)をガーゼなどにしみ込ませて腕の内側に7分間貼り、はがした直後と10分後にその部分の肌の色を見ます。はがした直後に赤くなっていれば非活性型、10分後に赤ければ低活性型です」と中野さん。
また最近流行の遺伝子検査でもこの2型アルデヒド脱水素酵素の型を調べてくれる。詳細は日経Goodayの記事「遺伝子検査、受けてみました【その2】」を読まれたい。
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