ビール中瓶のアルコール分解に2~3時間
では、どれくらいの量のお酒なら、二日酔いにならずに済むのだろうか。二日酔いになるかどうかは、肝臓がアルコールを処理できる能力を超えるかどうかにかかっている。アルコールは、胃と小腸から体内に速やかに吸収され、肝臓で処理しきれなかったアルコールが血中に入り全身を巡る。血中のアルコール濃度が高まるにつれて酔いが深まるが、通常は血中濃度が0.05%を超えると「酔ったな」という状態になり、0.15%を超えると酩酊状態になるという。「二日酔いにならないようにするには、血液中のアルコール濃度が急激に高くなり過ぎないような飲み方がいいでしょう」と狭間さんはアドバイスする。
ALDH2が活性型の人であれば、アルコールを分解する速度は、男性で1時間に約9g、女性で約6.5gといわれている。つまり、ビールの中瓶1本に含まれる20gのアルコールを分解するのに、男性で約2.2時間、女性で3時間かかるというわけだ。「そのときの体調やアルコールの量と濃度、飲むピッチと、飲酒後何時間後に起きるかなど、様々な要因が絡みますが、まず二日酔いを防止に必要なのは自分がどれだけのアルコール量を飲んでいるかを把握することです。飲む前に自分の量を決め、それを守るようにする。だらだら長時間飲まないことも大切」と中野さん。20g相当のアルコールを含む酒の種類を上げたので参考にしてほしい。
お酒の種類(アルコール度数) | お酒の量 |
ビール、発砲酒(5%) | 500mL |
チューハイ(7%) | 360mL |
焼酎(25%) | 110mL |
日本酒(15%) | 180mL |
ワイン(14%) | 180mL |
ウイスキー(43%) | 60mL |
ただし、冒頭で解説した通り、ALDH2のタイプが低活性型や非活性型の人は、同じアルコール量でも分解するのに時間がかかる。
また、アルコールの代謝の“場”である肝臓の大きさも、代謝能力に関係する。「一般的に肝臓が大きい人は小さい人よりアルコールの分解は早くなります。そのため、体の大きい男性の方が女性より代謝が早いのです」と中野さん。これに加え、女性は体内の水分量が男性より少ないため、同じ量のお酒を飲んでも血中のアルコール濃度が高くなりやすいという。女性の方が酔いやすい理由の一つだ。
年齢によっても変わってくる。「昔はもっと飲んでも二日酔いにならなかったのに」と思っているシニア世代の人も多いはず。それは、加齢とともに体内の水分量が減るため、血中アルコール濃度が高くなりやすいからだ。また、お酒を飲み始めたばかりの若い人も、アルコールに対する耐性ができていないためにアルコールの代謝は遅い。
つまるところ、酔い方は個人差が大きい。そのため、二日酔いの経験をある程度積んで、「これくらいまでなら大丈夫」という自分だけの限界値を知るしかない。とはいえ、二日酔いになりにくい「上手な飲み方」もある。それについては次回に詳しく紹介する。
三菱UFJニコス統括産業医

医師、ファルメディコ代表取締役社長
