日経グッデイ

【特集】 「言い訳」から読み解く、ダイエット成功のコツ

言い訳…その1「一生懸命やっているのにやせない」

ダイエットを失敗する原因はアナタの“言葉”にあった

 北村昌陽(きたむら まさひ)=科学・医療ジャーナリスト

今度こそ、やせたい! 肉、炭水化物を徹底的に断つ! こんな決意でダイエットに臨むアナタ。その決意こそがアナタのダイエットにとって最大の敵なのです。

つい言い訳のタネを探してしまう

 がんばってダイエットしているのに、なかなか体重が減らない。一度は減ったのにすぐリバウンドしてしまった…。ダイエットの悩みは尽きることがない。

 太ってしまう事情は人それぞれ。誰かが「これでやせた!」と言ったとしても、そのやり方が自分に適しているとは限らない。はやりのダイエット法が成功する保証もない。

 では、どうすれば自分に合った方法を見つけられるのだろう。それがわかれば苦労はないのだが…。

折りに触れて体重は気になるものの、思い通りに成功しないのがダイエットの難しさ。しかも年齢が進むにつれて、ますます成功率は下がる傾向に。(©tomwang/123RF.com)

 「良いやり方がありますよ」

 そんなふうに話し始めたのは、5000人以上の指導経験を持つダイエットカウンセラーの伊達友美さんだ。

 伊達さんによると、アナタのダイエットを邪魔している問題は、ダイエットがうまくいかないときに思わず出てくる「言い訳」や、ふと漏れる「愚痴」の中に隠れている。こういう言葉の影に、問題が隠れているのだ。

 「ダイエットの極意は、自分を知ること」

 なにやら高邁な話になりそうだが、伊達さんは、「自分の食生活の問題を知れば、成功への道も自然にわかります」と優しく、でもしっかりと言い切る。

 では頼もしき伊達さんと一緒に、ダイエットの「言い訳」を読み解いていこう。

やせないアナタは、実は栄養が不足している

 最初の言い訳は、「“○○は太る”と思って我慢しているのにやせない」。○○には「肉」「油物」「ご飯」などの単語が入る。うーん、確かにありがちなセリフだ。

 ダイエットしようと思ったとき、アナタはまず何をするだろう? 

図1◎ 日本人の「1人1日当たりの摂取カロリー」は減少傾向をたどっている
厚生労働省が公表する「栄養素等摂取量の年次推移」などによれば、戦後、摂取カロリーは1971年をピークに減少に転じ、現在は終戦直後を下回るレベルにある。(出典:2012年「国民健康・栄養調査」、1947年~1988年「国民栄養調査」(いずれも厚生労働省)をもとに編集部で作成)
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 おそらく多くの人が、「太りやすい食べ物を減らさなきゃ」と考えるはず。ここでターゲットになりやすいのが、肉や油物など、いかにも高カロリーの食品だ。また最近は、はやりの低炭水化物(低糖質)ダイエットの影響で、ご飯抜きに走る人も多い。

 もちろん、それで体重が落ちる人もいるだろう。そういう人はまあいい。「○○を減らす」というやり方が、自分に合っていたのだろうから(もっとも、体重は減ったけれど体調が悪くなる場合もある。その話は後で触れよう)。

 「でも実際には、太りそうなものを我慢して控えているのに、なかなか体重が減らない人も多いのです」と伊達さんは指摘する。

   図2◎ 肥満とやせの状況の推移
20歳以上で見た場合、女性の肥満者の割合は横ばいだが、男性は右肩上がりだ。 (出典:2007年『国民健康・栄養調査』より)
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 摂取カロリーを減らしてやせないなんておかしい、と思うかもしれないが、その発想自体が、実は勘違いなのだ。

 摂取カロリーと肥満の関係は、思ったほど単純ではない。日本人の食生活を継続的に調査している厚生労働省の調査によれば、戦後、日本人の摂取カロリーは1970年ころをピークに減少に転じ、現在は終戦直後を下回るレベルにある(図1)。しかし肥満者や、肥満に関連する糖尿病などの患者数はおおむね増加傾向。特に、肥満の男性はずっと増え続けている(図2)。ここからも、「食べなければやせる」とは必ずしもいえないことがうかがえる。

 このパラドックスを解くカギはどこにあるのだろうか。

 「人間の体は、“食べる量を減らせばその分やせる”というほど単純ではありません。やせるには、やせるための栄養が必要なのです」

たんぱく質が不足すると脂肪を燃やせない

 ほぉ。「やせるための栄養」とは、どういうことだろう。

 その代表格は、たんぱく質。たんぱく質は、体の素材になる成分で、筋肉、骨、内臓、皮膚といった体の主要なパーツは、水を除けば大部分がたんぱく質でできている。とりわけ筋肉はたんぱく質の塊といっていい。

 「私たちの体は、食べたものでできています。筋肉の材料は、元をたどれば肉や魚から取ったたんぱく質です」

 「やせる」とは、体脂肪を燃やすこと。そして体の中で最も体脂肪を燃やす器官は筋肉だ。だから、体脂肪を燃やす筋肉をつくるには、たんぱく質をしっかり取る必要がある。ところが、「太りそうな食べ物を避ける」という発想で肉類や油物を減らすと、たいていたんぱく質の摂取量が減ってしまう。

カロリー制限ばかりに目を向けていると、たんぱく質の不足になりやすい。効率よく体重を減らすには、1日を通して手のひら2枚分の肉や魚をとるように心がけることが大切。(©Brian Kenney/123RF.com)

 またビタミンB群などの微量栄養素も、脂肪を燃やすためには必須の栄養素。でもビタミンB群は肉や魚などの動物性食品に多く含まれているので、「肉を減らす」ダイエットに走ると、これも不足しやすい。その結果、やはり脂肪を燃やせない体になってしまう。

 「やせたい人が選びがちな、一見ヘルシーそうなランチなどは、パスタにサラダとデザートがついた程度のものが多く、たんぱく質が圧倒的に不足しています。そんな食事では、とても脂肪を燃やせませんよ」

 では、肉などを減らして「やせない」と悩んでいる人は、もっと食べた方がいい?

 「そうです。肉か魚のおかずを1日2回、合わせて手のひら2枚分ぐらいは食べたいですね。肉は赤身の部位がお薦めです」

やせたけれど体調が悪く、下腹だけがぽっこり出る

 以前は、たんぱく質不足の食事に陥るのはほとんど女性だったが、「最近は男性でも、まるで草食動物のような食事をしている人が増えています」と伊達さんは話す。

 「男性の方が、こうと決めたら誘惑に負けずにがんばってしまうのです」

 そういう人はときに、制限に歯止めがかからずに、危険なレベルまでがんばりすぎてしまうという。「1日1000kcalを切るような食事になっている人もいます」

 1000kcalというのは、糖尿病の治療で採用される低カロリー食(1日1200kcal程度が下限)をも下回るレベル。そこまで行けば、さすがに体重は減る。でもそういう人はしばしば、こんな悩みを口にするという。

 「体重は減ったけれど、体調が悪い」「やせたけれど体型が崩れて、下腹だけがぽっこり出ている」

 こんな人は、たんぱく質不足から筋肉が減ってしまった可能性が高い。

 筋肉が減るとどうなるか。お腹周まわをきりっと引き締めるのは、腹筋などの筋肉の働き。そういった筋肉が衰えると、ボディラインをキープできず、内臓が下垂して下腹だけぽこっと出た体型になりやすい。姿勢を保つ背中や腰などの筋肉が弱り、背すじが丸まってお年寄りのような姿になることも多い。

 また、肌や髪のたんぱく質が不足して、肌が荒れたり抜け毛が増えることもある。全体にやつれて、老け込んだ印象になるわけだ。

 そして、「脂肪を燃やせないタイプの人は、たいてい冷え性です」と伊達さんはいう。これは考えてみれば当然だろう。私たちの体は糖や脂肪を燃やして熱をつくり、体温をキープしているのだから、燃やすものがなければ、体が冷えるのは明らかだ。

 お腹の中が冷えると、内臓の機能が落ちて体調が悪くなる。胃痛や腹痛、下痢、便秘、疲れやすい、風邪を引きやすいなどの不調を起こしやすい。

 ダイエットの目的はあくまでも体脂肪を減らすことだ。

 「よく代謝が高いとか低いとかいいますが、代謝量とは消費するカロリーのことで、これは筋肉量に比例します。筋肉が多い人は代謝が高く、消費するカロリーも多いからやせやすいのです。たんぱく質不足で筋肉が減ってしまうと、やせにくくなります」

 脂肪を燃やせる体には筋肉が必要。筋肉不足の体は、やせにくく、リバウンドもしやすい。筋肉がやせて体重が減っても、決してダイエット成功とはいえない。むしろ大失敗。まずは、たんぱく質をしっかり摂ることだ。

ご飯抜きでも「やせるための栄養素」が減ってしまう

 次に、ご飯を減らすダイエットはどうだろう。低炭水化物ダイエットの流行で、ご飯を減らす(あるいは抜く)人も多いようだが…。

 「低炭水化物食がうまくいくかどうかは人によります。やせる人もいますが、やせない人も多いです。また、いったん体重が落ちたものの、元の食事に戻ったとたんにリバウンドするケースも目立ちます」

特定の栄養素の「不足」も、過剰な「摂取」もダイエットの失敗の原因になる。和食の献立の基本になる「一汁三菜」は、ビタミンとミネラルをはじめ、良質なたんばく質、脂質を含む最高のダイエット食なのだ。(©yumehana-Fotolia.com)

 ご飯の炭水化物(糖質)や脂質は、体の活動を支えるカロリー源。これらが減ると、その分、筋肉になるはずだったたんぱく質がカロリーとして消費される。たんぱく質が使われてしまえば、筋肉は減り、代謝が下がってしまう可能性がある。

 また、日本人にとってご飯は「主食」。いわゆる「一汁三菜」に代表されるような食事のスタイルが身に付いているため、ご飯のある食卓には自然とみそ汁やおかずも欲しくなる。そういう食事をすることで満足感が高まると同時に、たんぱく質やビタミン類などのバランスも程よいところに落ち着くわけだ。

 だが「ご飯抜き」にすると、基本的な食事のスタイルが壊れてしまう。栄養バランスをとるのが難しくなり、そこから栄養不足に陥ることもある。

 つまり、ご飯を抜くことで、やせるための栄養が足りなくなるパターンもあるということだ。

「過剰を削る」より、「不足を補う」ことが大事

 私たちは通常、「太っている」=「栄養過剰」と考えるから、食べる量を減らしてダイエットしようとする。「でも、太っている人の食事をチェックすると、必ず不足している栄養があります。カロリー的には過剰なうえに、やせるための栄養が足りていないのです」と伊達さんはいう。

 「○○を減らしているのにやせない」と言い訳している人は、○○を減らすことで、やせるための栄養をさらに削っている可能性が高い。

 「人間は、何か足りない栄養があると飢餓感を覚えます。これは本能的な欲求ですから、意思で我慢できるものではありません。すると、食べたい衝動がますます強くなり、どこかで食欲が爆発して“どか食い”に走ります」。ダイエット=我慢だと思い込んで、この悪循環にはまっている人が非常に多いのだ。

 そこで伊達さんは「過剰を削る」よりも、まず「不足を補う」ことを薦めている。「足りない栄養を補えば、食欲が落ち着き、体重も自然と減るのです。我慢は、ダイエットの大敵なのです」

体に役に立つ油は積極的に取ろう

 では、何を補えば良いのか。伊達さんによると、多くの人が不足しているのが、「たんぱく質」「汁物」「良質な油」だという。

 たんぱく質は、先にも紹介した通り、肉か魚のおかずを1日2回は食べたい。汁物はみそ汁やお吸い物など和風のほか、オニオンスープやミネストローネなどでもいい。体が温まって食事の満足感が高まり、ミネラル類などの不足がちな栄養を補える。

 「コンビニ弁当で済ませるような場合でも、カップみそ汁を追加するようにしましょう」

 最後は油。高カロリー成分の代表格で、ダイエットとなると最も避けられがちな成分だ。実際、マーガリンや揚げ物の油などに多く含まれるトランス脂肪酸は、取りすぎると心臓病などのリスクを高めるので、これらはなるべく避けた方がいい。

 だが一方で、ダイエットに役立つ油もある。それがオメガ3肪酸脂。魚の脂や、シソ油、エゴマ油、亜麻仁油などに多く含まれる。青魚に多く含まれる「DHA(ドコサヘキサエン酸)」「EPA(エイコサペンタエン酸)」という名前を聞いたことがあるかもしれないが、これらもオメガ3脂肪酸だ。

 オメガ3脂肪酸は、動脈硬化や糖尿病を防ぐ健康的な油として、厚生労働省も摂取を薦めている(1日2g程度以上:サンマなら1尾程度)。脳や細胞膜やホルモンの素材になる大切な成分で、不足すると体内の代謝が下がってしまう。

 「オメガ3脂肪酸は、体の中で合成できないため、食事から取る必要があるのですが、現代の食生活では最も不足しがちです。積極的に取りましょう」。過熱に弱いため、魚から取る場合は、刺身やカルパッチョなど生で食べる料理が理想的。シソ油などはドレッシングのほか、汁物や麺類に垂らして食べるとおいしい。

 そして、これら不足がちな成分をきちんと取るためには、「食事のときに5つの皿を意識するといいでしょう」と伊達さんはいう。5つの皿とは「主食(ご飯)」「汁物」「主菜(メインディッシュ)」「副菜(サイドディッシュ)」「香の物(漬け物、デザート)」のこと。日本の伝統的な一汁三菜スタイルともほぼ一致する。もちろん、この組み合わせなら和食だけでなく、洋食でも中華でも大丈夫。

 食事のたびにこれら5つの皿をできるだけそろえて、「やせるための栄養」を満たす。「我慢しているのにやせない」と言い訳している人は、ぜひやってみよう。

コラム  好きなものを食べて太る? 我慢して太る?
「好きなものを我慢して太る人たち」  
「ダイエットのためには好きな食べ物を我慢する」という一般的な考え方と、伊達さんの説明はまるで逆。この点についてもう少し捕捉しよう。 伊達さんは最近、カウンセリング受診者が「好きなものを食べて太った人」と「好きなものを我慢して太った人」に二極化していることに気付いたという。問診や食事日記を分析すると、カウンセリングを行っている医療機関のタイプによって、受診する人の傾向がまったく異なるというのだ。
高血圧や糖尿病などの疾患のある人が保険証を使って受診する診療では、74%の人が、好きなものを食べて太っていた(問診で「好き」と申告した食べ物が食事日記にたびたび現れる)。これは体に無頓着な生活をしてきて、健診で何か引っかかり、医師からやせるように指導を受けた─といった経緯が考えられる。
一方、健康保険などの医療保険が使えない自由診療では、好きなものを我慢して太った人が64%にのぼるという。自由診療には、保険診療の治療内容に満足できない人や、病気とは診断されないレベルの不調に悩む人が訪れる。こういう人は概して健康志向が高く、ダイエットの知識も豊富で、いろいろなダイエット法をすでに自分で試している。そういう人に、「我慢して太る」パターンが現れやすいのである。
伊達友美(だて ゆみ)さん
東京国際クリニック 管理栄養士・日本抗加齢医学会認定指導士
伊達友美(だて ゆみ)さん 静岡県浜松市生まれ。これまで5000人以上の栄養指導の経験を持つ。単なる減量ではなく「ボディラインと肌を美しく変身させる」ことを目的とした指導を行う。自らも20kgの減量とニキビ肌改善の経験がある。著書『大盛りご飯を食べてもやせる技術』(池田書店)ほか多数。自身のホームページにおいて「ダイエットの女王ブログ」などを展開中。