やせたけれど体調が悪く、下腹だけがぽっこり出る
以前は、たんぱく質不足の食事に陥るのはほとんど女性だったが、「最近は男性でも、まるで草食動物のような食事をしている人が増えています」と伊達さんは話す。
「男性の方が、こうと決めたら誘惑に負けずにがんばってしまうのです」
そういう人はときに、制限に歯止めがかからずに、危険なレベルまでがんばりすぎてしまうという。「1日1000kcalを切るような食事になっている人もいます」
1000kcalというのは、糖尿病の治療で採用される低カロリー食(1日1200kcal程度が下限)をも下回るレベル。そこまで行けば、さすがに体重は減る。でもそういう人はしばしば、こんな悩みを口にするという。
「体重は減ったけれど、体調が悪い」「やせたけれど体型が崩れて、下腹だけがぽっこり出ている」
こんな人は、たんぱく質不足から筋肉が減ってしまった可能性が高い。
筋肉が減るとどうなるか。お腹周まわをきりっと引き締めるのは、腹筋などの筋肉の働き。そういった筋肉が衰えると、ボディラインをキープできず、内臓が下垂して下腹だけぽこっと出た体型になりやすい。姿勢を保つ背中や腰などの筋肉が弱り、背すじが丸まってお年寄りのような姿になることも多い。
また、肌や髪のたんぱく質が不足して、肌が荒れたり抜け毛が増えることもある。全体にやつれて、老け込んだ印象になるわけだ。
そして、「脂肪を燃やせないタイプの人は、たいてい冷え性です」と伊達さんはいう。これは考えてみれば当然だろう。私たちの体は糖や脂肪を燃やして熱をつくり、体温をキープしているのだから、燃やすものがなければ、体が冷えるのは明らかだ。
お腹の中が冷えると、内臓の機能が落ちて体調が悪くなる。胃痛や腹痛、下痢、便秘、疲れやすい、風邪を引きやすいなどの不調を起こしやすい。
ダイエットの目的はあくまでも体脂肪を減らすことだ。
「よく代謝が高いとか低いとかいいますが、代謝量とは消費するカロリーのことで、これは筋肉量に比例します。筋肉が多い人は代謝が高く、消費するカロリーも多いからやせやすいのです。たんぱく質不足で筋肉が減ってしまうと、やせにくくなります」
脂肪を燃やせる体には筋肉が必要。筋肉不足の体は、やせにくく、リバウンドもしやすい。筋肉がやせて体重が減っても、決してダイエット成功とはいえない。むしろ大失敗。まずは、たんぱく質をしっかり摂ることだ。
ご飯抜きでも「やせるための栄養素」が減ってしまう
次に、ご飯を減らすダイエットはどうだろう。低炭水化物ダイエットの流行で、ご飯を減らす(あるいは抜く)人も多いようだが…。
「低炭水化物食がうまくいくかどうかは人によります。やせる人もいますが、やせない人も多いです。また、いったん体重が落ちたものの、元の食事に戻ったとたんにリバウンドするケースも目立ちます」

ご飯の炭水化物(糖質)や脂質は、体の活動を支えるカロリー源。これらが減ると、その分、筋肉になるはずだったたんぱく質がカロリーとして消費される。たんぱく質が使われてしまえば、筋肉は減り、代謝が下がってしまう可能性がある。
また、日本人にとってご飯は「主食」。いわゆる「一汁三菜」に代表されるような食事のスタイルが身に付いているため、ご飯のある食卓には自然とみそ汁やおかずも欲しくなる。そういう食事をすることで満足感が高まると同時に、たんぱく質やビタミン類などのバランスも程よいところに落ち着くわけだ。
だが「ご飯抜き」にすると、基本的な食事のスタイルが壊れてしまう。栄養バランスをとるのが難しくなり、そこから栄養不足に陥ることもある。
つまり、ご飯を抜くことで、やせるための栄養が足りなくなるパターンもあるということだ。
「過剰を削る」より、「不足を補う」ことが大事
私たちは通常、「太っている」=「栄養過剰」と考えるから、食べる量を減らしてダイエットしようとする。「でも、太っている人の食事をチェックすると、必ず不足している栄養があります。カロリー的には過剰なうえに、やせるための栄養が足りていないのです」と伊達さんはいう。
「○○を減らしているのにやせない」と言い訳している人は、○○を減らすことで、やせるための栄養をさらに削っている可能性が高い。
「人間は、何か足りない栄養があると飢餓感を覚えます。これは本能的な欲求ですから、意思で我慢できるものではありません。すると、食べたい衝動がますます強くなり、どこかで食欲が爆発して“どか食い”に走ります」。ダイエット=我慢だと思い込んで、この悪循環にはまっている人が非常に多いのだ。
そこで伊達さんは「過剰を削る」よりも、まず「不足を補う」ことを薦めている。「足りない栄養を補えば、食欲が落ち着き、体重も自然と減るのです。我慢は、ダイエットの大敵なのです」
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