痛風を引き起こすだけではない! メタボの第4のマーカー「尿酸値」に注意
第1回 尿酸値を下げる生活習慣で、メタボ体質を改善しよう
荒川直樹=科学ライター
過去33年間で患者数が5倍に増えた成人男性に多い病気は何だろうか。ヒントは「ものすごく痛い病気」。答えは痛風である。痛風発症の背景にある高尿酸血症の患者数も約1000万人に上り、成人男性に限れば4~5人に1人。多くの場合自覚症状はないが、尿酸値は血圧、血糖値(HbA1c)、血中脂質に続くメタボリックシンドローム進行の「第4のマーカー」として重視されるようになってきた。動脈硬化などを予防し健康寿命を延ばすための対策のスタートは高尿酸血症と診断されたときでは遅い。「正常値でも尿酸値の変化に注目し、メタボ対策に生かしてほしい」と話す複十字病院膠原病リウマチセンターの谷口敦夫センター長に、最新の尿酸値対策を解説してもらった。
『「尿酸値」を下げれば体が変わる』 特集の内容
- 第1回痛風を引き起こすだけではない! メタボの第4のマーカー「尿酸値」に注意←今回
- 第2回「尿酸値」を下げる食事 専門医が語る7つのポイント
- 第3回尿酸値がなかなか下がらない! どのタイミングで受診すべき?
尿酸値7.0mg/dLを境に痛風リスクが高まる

痛風は高尿酸血症が直接関係する代表的な病気だ。痛風の「風」は病気という意味なので、「痛風」は「痛みの病気」ということ。よほどの痛みがあるわけだ。ある日突然(発作的に)、足の親指の付け根など膝から下の関節に起こりやすく、特に最初の2~3日は痛みが激しい。靴も履けないほど痛いので、タクシーを呼んで近くの医療機関に駆け込んだという体験談を身の回りの人から聞く機会は多いだろう。
厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、1986年以降の33年間で国内の痛風患者数は約5倍の約125万4000人になった。閉経前の女性が発症することはまれなので、男性に限ってみれば6倍の約120万人だ。発症には体質も関与しているが33年で日本人の遺伝的特徴が変わることは考えられず、急増の原因は過食や運動不足による肥満、アルコールの多飲など生活習慣の変化だと考えられる。痛風に詳しい複十字病院(東京都清瀬市)の谷口敦夫センター長は、「ストレスも痛風発症に関与しているので、働き盛りの男性の病気ともいえます」と指摘する。

痛風は血液中の尿酸値が高い人に起こる。血液の尿酸の濃度が7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と診断される。この値以上になると溶け込める尿酸の量が限界になり、尿酸は結晶化する。尿酸の結晶化は関節の滑膜(関節を覆う膜)や関節軟骨の周りで起こり、それらの表面に少しずつたまっていく。そして、このたまった尿酸の結晶が剥がれ落ちると、免疫細胞である白血球がそれを異物として認識し攻撃、炎症を起こす物質を放出することで関節内に炎症が起こる。この炎症反応による激しい痛みが痛風発作だ。
痛いのは、誰もが嫌だろう。かといって、「尿酸値は高いけれど、痛風発作はまだ起きてないから大丈夫」というわけではない。また、「痛風の痛みは消えたから良くなったはず」と安心するのもよくない。一体どういうことか、この特集では尿酸値について知っておきたい知識を解説していく。