筋肉博士に聞く!「姿勢改善筋トレ」で若見え、メタボ改善、便秘解消
第1回 姿勢を支える筋肉は何歳になっても「再学習させること」が可能!
柳本操=ライター
ショーウインドーに映った自分の姿を見て「老けたな……」とため息をつくことはないだろうか。その原因はあなたの姿勢にあるかもしれない。姿勢の悪化は「老け見え」につながるだけでなく、慢性的な肩こりや腰痛などの不調の根本原因となる。姿勢を支えている「抗重力筋」を鍛えて姿勢を改善すると、若々しく見えるだけでなく、内臓脂肪の減少、便秘解消など、プラスの効果は全身に波及していく。姿勢と筋肉、老化の関わりや、「良い姿勢」を手に入れる方法を、筋肉と全身の関係を長年研究してきた、筋肉博士こと東京大学名誉教授の石井直方氏に聞いた。
『筋肉博士直伝!「姿勢改善筋トレ」』 特集の内容
- 第1回筋肉博士に聞く!「姿勢改善筋トレ」で若見え、メタボ改善、便秘解消←今回
- 第2回重要な筋肉ほど加齢で減る! 「悪い姿勢」も固定化、スロトレで鍛え直す
- 第3回キング・オブ・エクササイズで筋肉を効率よく鍛える! 姿勢も改善
日々の習慣の積み重ねで姿勢は悪化 だが、筋肉の状態は変えられる
長時間パソコン作業をしたりスマホを眺めたりしていると、気がつけば前かがみの猫背姿勢で凝り固まっている。はっとして背筋を正しても、いつの間にか元の前かがみの状態に。外出時には、ショーウインドーに映り込んだ自分の姿が予想以上に老けこんでいてショックを受けることも――。「姿勢」に関しては「イマイチ自信がない」と思っている人が多いのではないだろうか。
「加齢とともに、姿勢維持に重要な働きをする太ももやお尻、お腹回りや背中の抗重力筋は減っていきます。体質や環境による個人差はありますが、おおまかに言えば30歳ぐらいで筋肉量はピークになり、このピークを過ぎると減り始め、中年期になると下肢、特に太ももの筋肉は1年ごとに約1%ずつ減っていきます。このような筋肉の衰えに加え、日常的な活動不足、悪い姿勢の状態を長く続けるといった生活習慣が積み重なった結果、悪い姿勢はその人の基本姿勢として定着していきます」と、東京大学名誉教授の石井直方氏は言う。
悪い姿勢がもたらす悪影響は「老け見え」だけではない。
猫背で肩や頭を前に突き出すデスクワーク姿勢は、首と肩に負荷をかけ、首や肩、背中の筋肉の緊張状態が続くと頑固な“凝り”となる。また、イスの背にどっかり体を預ける座り方で骨盤が後ろ側に倒れると腰部分の腰椎に不自然な負荷がかかり、痛みやしびれを引き起こすことも。「最近は、若い年代でも悪い姿勢でスマホを操作し続けているので、このような姿勢由来の肩こりや腰痛などの不調が多くなっているようです」(石井氏)
このような不調だけでなく、意外なことに、姿勢は「メタボリックシンドローム(メタボ)」や「便秘」とも関係しており、姿勢改善によってメタボや便秘が改善することも少なくないという。
詳しくは後述するが、「被験者に姿勢を支える抗重力筋を鍛えるトレーニングをしてもらうと、姿勢が良くなると同時に、男性の場合、内臓脂肪が減少し、女性の場合は頑固な便秘が改善した、という声が非常によく寄せられるのです」と石井氏は言う。

つまり、姿勢は、悪い状態で完全に定着してしまう前であれば、それを支える筋肉を鍛えることである程度は改善することができ、姿勢を改善することで全身の不調も改善される可能性があるのだ。
「筋肉は、体の中でも、運動によって直接働きかけ、状態を変えることができる数少ない器官です。さらに、筋肉を動かし姿勢を正しくすることで、筋肉のみならず全身に好影響を与えることができます」(石井氏)
この特集では年齢とともに定着し始める「悪い姿勢」の原因、不調との関わり、さらに、若々しい姿勢を復活させるトレーニング法のポイントなどを、3回にわたって詳しく聞いていく。