シニアになったら卵は1日1~2個も 塩分、コレステロールは気にし過ぎない
第2回 フレイル対策の食事は「1にカロリー、2にたんぱく質」が鉄則!
伊藤和弘=ライター
年を取ったらしっかり食べ、むしろ太ったほうが長生き……。そんな「健康の常識」が180度変わる話を、在宅医療のエキスパート、佐々木淳氏に聞いた。要介護状態の前段階ともいえるフレイル(虚弱)のリスクに備えるためには、シニアの食事は「1にカロリー、2にたんぱく質」が鉄則。塩分やコレステロールはあまり気にしなくていいという。いったいどういうことだろうか。詳しく聞いていこう。
『年を取ったら食事は「質より量」』 特集の内容
- 第1回なぜ、年を取ったら「どんどん食べる」が正解なのか?
- 第2回シニアになったら卵は1日1~2個も 塩分、コレステロールは気にし過ぎない←今回
- 第3回毎日肉を食べる! ファストフードもOK 意外な「長生き食」とは

フレイルを避けるためにとにかくたくさん食べる
前回、在宅医療のエキスパートでこれまでに数千人の高齢者を診察してきた医療法人社団悠翔会理事長の佐々木淳氏に、「年を取ったら食事はとにかくたくさん食べることが大切。やせているよりも、むしろ太ったほうがいい」と目からウロコが落ちるような話を聞いた。

太れば生活習慣病のリスクが高まり、動脈硬化が進んでしまう。しかし、シニアになると動脈硬化のリスクは若いころほど重要ではなくなり、血圧や血糖は下げ過ぎないほうがいいのだという。健康に関する常識が180度変わってしまうのだ。

年を取ると怖いのは、生活習慣病よりも「フレイル(虚弱)」のリスクだ。フレイルとは、加齢とともに心身の活力(筋力や認知機能など)が低下し、生活機能障害や要介護状態、死亡などのリスクが高くなった状態のこと。加齢によって筋肉量が減ると、筋力やバランスをとる能力などが衰え、転倒しやすくなり、骨折が増える。また、口やのどの筋肉も減り、異物を吐き出す力が衰えることから誤嚥(ごえん)性肺炎も起こしやすくなってしまう。そして、骨折や肺炎は、そのまま高齢者の入院・寝たきりにつながってしまう。
佐々木氏によると、一般にフレイルになるのは70代以降。そして、日常生活で「ペットボトルのキャップが開けられない」「片足で立って靴下を履けない」「信号が青のうちに横断歩道を渡り切れない」などの症状がある場合、食事をギアチェンジしたほうがいいタイミングだといえる。こうした症状は、フレイルのサインだからだ。
そして、佐々木氏は驚くべきことに、「シニアになったらエネルギー(カロリー)や糖質、塩分、コレステロールのとり過ぎはあまり気にしなくていい」と言う。いったいどういうことだろうか。詳しく聞いていこう。