「がんのリスク」は酒、たばこ、感染に対処するだけで大幅に減る!
第2回 禁煙は必須、お酒はリスクを踏まえた上で節酒を
田村知子=ライター
日本人の2人に1人が生涯のうちにがんにかかる時代だが、日本人のがんの約4割は、生活習慣の改善などで予防が可能だということが最新研究で分かってきた。特集第2回は、日本人のがんの予防に重要な6つの要素を紹介するとともに、なかでも影響度の高い「喫煙」「飲酒」「感染」について詳しく解説していく。
『がん予防の鉄則』 特集の内容
- 第1回日本人のがんの4割は予防できる!
- 第2回「がんのリスク」は酒、たばこ、感染に対処するだけで大幅に減る!←今回
- 第3回がん予防、食事・運動の鉄則 加工肉・赤肉のリスクは? 緑茶やコーヒーは良い?
喫煙、飲酒、感染への対策が、がん予防の第1歩
本特集の第1回で、「日本人のがんの約4割は予防できる要因によって起こっている」と述べた。「日本人におけるがんの原因の寄与度(日本人のがんのうち、特定の要因がなかった場合に予防できる割合)」を試算した、国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部部長の井上真奈美氏はこう話す。
「日本人男性のがんの原因となっている因子で最もその割合が高いのは『喫煙(本人喫煙)』。その次が『感染』、『飲酒』です。女性では『感染』が最も高く、その次に『喫煙(本人喫煙)』、『飲酒』という順でした。総じて、男性のがんの約43%、女性のがんの約25%は予防が可能という結果が出ています」(井上氏)
国立がん研究センターをはじめとする研究グループでは、こうした研究成果などを基に、現時点で科学的根拠が明らかになっている「日本人のためのがん予防法」を提示している(図2)。そこで挙げられている6つの要素とは、「喫煙」「飲酒」「食事」「身体活動」「体格」「感染」の6つ。このうち「感染」以外の5つは、日常の生活習慣に関わるものだ。
「この5つの健康習慣をすべて実践した場合、全く実践しないか1つだけ実践した場合に比べて、がんになるリスクが男性で43%、女性で37%低下するという推計が示されています」(井上氏、図3)

井上氏は「がんとの因果関係が分かっているウイルスやピロリ菌の感染の有無を確認し、もし感染していた場合には治療を受けて排除する。また、すべてのがんのリスクを高める喫煙や飲酒の習慣を見直すだけでも、がんのリスクはかなり低減します。その上で、現時点で科学的根拠が示されている食生活や身体活動、適正体重の維持を実践していくことが大切でしょう」と話す。
今回はまず、がんの罹患に影響度の高い「喫煙」「飲酒」と「感染」の3つについて解説していこう。