日本人のがんの4割は予防できる!
第1回 今、日本人に増えているがん、死亡率が高いがんとは?
田村知子=ライター
日本人の2人に1人が、生涯のうちにがんにかかるといわれて久しい。1981年以降、がん(悪性新生物)は日本人の死因の不動の1位をキープし続けている。誰でも年齢を重ねるにつれ、がんになるリスクは高まる。しかし、がんは環境や生活習慣とも深い関わりがあり、その改善によってリスクを下げられることが近年の研究で分かってきている。本特集では、現時点での科学的根拠(エビデンス)に基づく、日本人のための最新のがん予防策を、国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部部長の井上真奈美氏に解説していただく。
『がん予防の鉄則』 特集の内容
- 第1回日本人のがんの4割は予防できる!←今回
- 第2回「がんのリスク」は酒、たばこ、感染に対処するだけで大幅に減る!
- 第3回がん予防、食事・運動の鉄則 加工肉・赤肉のリスクは? 緑茶やコーヒーは良い?
がんと診断される人は年間約100万人! 死亡は約38万人
日本人の2人に1人が、生涯のうちにがんにかかるといわれる時代。最新の統計では、2018年に新たにがんと診断された人の数は98万856人(男性55万8874人、女性42万1964人。性別不詳があるため男女の合計とは一致しない)。おおよそ100万人が、毎年新たにがんと診断されていることになる。
がんにはさまざまな種類があるが、現代の日本人に多いがんは何だろうか。男性では前立腺がんが9万2021人と最も多く、がん罹患全体の16.5%を占めている。後述するが、この数には、PSA(前立腺特異抗原)検査による早期発見が増え続けているという背景がある。第2位は胃がん、第3位は大腸がんだ。一方、女性で最も多いのは乳がんで、9万3858人。次いで大腸がん、肺がんの順番に多い。
一方、命を落とす人が多いがんは、どのがんだろうか。2020年にがんで死亡した人は男性22万989人、女性15万7396人で、総数は37万8385人だった。男性では罹患数の多いトップ3のがんを押しのけ、肺がんが5万3247人と最も多く、がん死亡全体の24%を占めている。第2位は胃がん、第3位は大腸がんだ。女性で最も多いのは大腸がんの2万4070人で、女性のがん死亡全体の15%となっている。第2位は肺がん、第3位は膵臓がんだった。
国立がん研究センター がん対策研究所予防研究部部長の井上真奈美氏は、「生涯でがんに罹患する確率は男性で65.0%、女性で50.2%。日本人の2人に1人となっていて、この数値は近年変わっていません」と話す。
加齢はがんをもたらす主要な危険因子だ。年齢が上がれば上がるほど、がんで命を落とす人は増えてくる。だが一方で、がんの罹患には、さまざまな環境要因や生活習慣も深く関わっていることが分かってきている。「私たちの研究では、日本人男性のがんの43%、女性のがんの25%は、自分の生活習慣や環境要因の改善で避けられる、つまり、予防できる要因によって起こっていることが分かっています」と井上氏は話す。
誰しも年齢を重ねることは避けられない。だが、身近な生活習慣を変えるだけでがんを予防できる確率が上がるのであれば、実践しない手はないだろう。「働き盛りの世代は、生活習慣の見直しや、がんの原因となる感染への対処などによって、がんのリスクを大きく減らせる可能性を持っています」(井上氏)
本特集では、近年日本人の間で増えているがん、減っているがんの背景にあるものを紐解きつつ、明らかになってきた日本人のがんの原因、そして、がん予防にはどんなことが重要なのかについて、井上氏への取材に基づき解説していく。