揚げ物は食べすぎ注意! 細胞の若返り担う「オートファジー」維持の5つの対策
第3回 オートファジー活性化に有望な主な食品成分も紹介
柳本 操=ライター
全身の細胞で日々起こっている“細胞の若返り”を担う「オートファジー」は、老化や生活習慣病、加齢に伴う病気などに密接に関わる。オートファジーの研究を行う大阪大学栄誉教授の吉森保氏は、「オートファジーの活性化によって健康寿命を延ばせる可能性がある」と話す。現在、世界中で飛躍的に進んでいるオートファジー研究だが、ヒトで確認されていることはまだ少ない。しかし、日常生活でオートファジー活性化につながる可能性があるヒントはいくつかある。第3回では、私たちの体に備わるオートファジー機能をなるべく落とさず維持していくために、今日からできる「5つのこと」を聞いていこう。
『老化抑制のカギ「オートファジー」』 特集の内容
- 第1回老化抑制のカギを握る「オートファジー」 最新研究で見えてきたその驚異の機能
- 第2回細胞の若返り機能「オートファジー」は60代以降、急速に衰える
- 第3回揚げ物は食べすぎ注意! 細胞の若返り担う「オートファジー」維持の5つの対策←今回
オートファジーを維持できれば健康寿命を延ばすことができる
私たちの全身の細胞で、少しずつではあるがコンスタントに起こっている「オートファジー」は、“細胞が自力で自分を新品にする”機能のこと。しかし、近年の研究によって、ヒトの場合おそらく60歳を過ぎた頃から急速にその働きは低下し、そのことが老化や、免疫抗体を作る力の低下、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病などさまざまな病気と関わる可能性があることを、第1回、第2回でお伝えしてきた。
オートファジーの研究を長年行ってきた大阪大学栄誉教授の吉森保氏は、2009年にオートファジーにブレーキをかける「ルビコン」というタンパク質を発見、その後の研究によって、老化に伴いこのルビコンが増えることが、60代以降に急速に進むオートファジーの低下に関わることを明らかにしてきた。吉森氏は「老化とともにルビコンが体内で増えるようプログラムされているのなら、そのスイッチを解除すれば科学の力で老化をコントロールできるのでは」と考え、研究を続けている。
吉森氏の研究の原動力になっているのは、「人々の健康寿命を延ばしたい」という思いだという。
「健康寿命」とは、文字通り、「健康上の問題で日常生活が制限されることがない期間」のこと。認知症や寝たきりになると、介護の必要が生じ、健康寿命はストップする。
最新の統計では、わが国の「平均寿命」と「健康寿命」には男性では8.73年、女性では12.07年の開きがあることがわかっている。この開きは、「自由に動けず、病気とともに生きるかもしれない期間」を意味する。「たとえ寿命が延びても、晩年の8~12年を要介護や寝たきりの生活として送るのは、本人にとっては苦しいことです。この期間をなるべく短くし、平均寿命に近づけられないか、というのが私の目指すところです」(吉森氏)
人生100年時代、と言われるが、その言葉を素直に受け止められない、という人もいるだろう。「確かにそうですね。実際、お年寄りに長生きしたいですか? と聞くと『イエス』と答える方は少ないです。なぜなのか。それは年をとって調子が悪くなり病院に行くと、『もう年なんだから仕方がない』と言われることが多いからです。これはとても理不尽なことだと私は感じます。仕方がない、なんて言われるとがっくりきてしまいますよね。みなさんがそんなふうに加齢をハッピーに捉えられない状況をなんとか変えたい、というのが私にとっての重要な社会課題です。もちろん、今ただちに健康寿命を延ばすことは不可能ですが、われわれの研究が積み重なっていけば、年齢だから、とあきらめず、希望を持てる世の中が実現されると考えています」(吉森氏)
そして、オートファジー研究の完成を待たずとも、私たちにできそうな対策がある、と吉森氏は話す。それは「細胞をケアすること」だ。
「これまで解説してきた通り、病気になるのは、細胞の健康が失われるからです。細胞の再生を司るオートファジーの研究成果をヒントに、有効と思われることを実践することで、オートファジーの働きが低下しないように維持したり、あるいは活性化させられる可能性があります」と吉森氏は言う。
ここからは、具体的な対策について聞いていこう。