「スーパーセンチナリアン」研究で分かった 元気で長生きのカギ
老いない食事&ゆるトレ from 日経トレンディ(4)
中城 邦子
2022年4月4日発売の「日経トレンディ2022年5月号」 ▼Amazonで購入する では、「老いない食事&ゆるトレ」を特集。究極の健康長寿モデルともいえるのが、110歳以上の高齢者である「スーパーセンチナリアン」。その人たちの特徴を知ることは、老いにくく元気に生きるヒントになる。慶応義塾大学医学部・百寿総合研究センターの研究から分かった「元気で長生き」のカギを紹介する。

厚生労働省が毎年9月の老人の日に発表する100歳以上の高齢者の数は、51年連続で過去最多を更新中だ。100歳以上を百寿者、105歳以上を超百寿者、110歳以上を「スーパーセンチナリアン」と呼ぶ。世界的な長寿国である日本においても、このスーパーセンチナリアンの数は決して多くない。
2020年の国勢調査の結果を見ると、百寿者は約8万人いるが、超百寿者は6515人と百寿者の8.2パーセントまで減り、さらにスーパーセンチナリアンは141人で、超百寿者の中の僅か2.2パーセントだ。
「超健康長寿」の3つの特徴
105歳超えに大きな壁があることが分かる。この壁を超える人たちにはどんな特徴があるのか。それを知ることは、老いにくく元気に生きるヒントになるだろう。この研究をしているのが、慶応義塾大学医学部・百寿総合研究センターの新井康通教授だ。
「スーパーセンチナリアンの最大の特徴は、100歳時点でも日常生活の自立が保たれており、百寿者の中でも特に健康寿命が長いことにある」と語る。
究極の健康長寿モデルともいえるスーパーセンチナリアンの医学的特徴は3つあるという。1つは認知機能が保たれていることだ。100~104歳で亡くなった人と105~109歳で亡くなった人、110歳以上まで長生きした人の、100歳時点での認知機能を比べると、スーパーセンチナリアンの認知機能が最も高かった。高齢になっても認知機能が保たれている人ほど、長生きの可能性が高いのだ。
2つ目は、心臓血管病になりにくいこと。「もともと百寿者は動脈硬化が少ないと言われていたが、実際、血液バイオマーカーを調べた結果、NT-proBNP(神経内分泌因子)の血中濃度が低いほどスーパーセンチナリアンに到達する可能性が高いことが分かった」と新井氏。NT-proBNPは心不全の診断にも使われるもので、心臓の働きが悪くなると数値が上がってくる。
「心臓の働きが悪くなると腎臓の機能も低下する。また、糖尿病や高血圧が適切に治療されずに腎臓が弱ると、心臓にも負担がかかるという悪循環がある。通常は加齢とともにNT-proBNPの数値が高くなるが、スーパーセンチナリアンはその上がり方が緩やか。心臓や血管の老化が特に遅いのが特徴だ」
3つ目は、フレイルになるのが遅いことだ。フレイルとは加齢に伴って歩行速度が落ちたり、握力が低下したり、疲れやすくなったりするなどして体が弱り、外出する気力も低下して心身の活力が衰えた状態のこと。要介護になる原因の一つとされている。超百寿者やスーパーセンチナリアンは、こうした状態になる以前の健康寿命をより長く保っている。
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- 遺伝的要因より、頭を使う習慣が大事