睡眠時間が「6時間」では足りないこれだけの理由
第2回 睡眠不足は万病のもと! ここまで分かった病気との関係
伊藤和弘=ライター
睡眠に悩む多くのビジネスパーソンを診察している青山・表参道睡眠ストレスクリニック院長の中村真樹氏に、エビデンスに基づく“睡眠の新常識”を解説していただく本特集。前回は睡眠にまつわる数々の誤解を紹介した。今回は新たに3つの新常識を紹介するとともに、「なぜ睡眠不足が体に良くないのか」について、より詳しくお伝えしよう。最近の研究から、睡眠不足は日中の眠気やパフォーマンスの低下にとどまらず、多くの生活習慣病やメンタル不調、さらには認知症のリスクまで高めることが分かってきた。
『ぐっすり眠るための8つの新常識』 特集の内容
- 第1回「睡眠は90分単位」は誤解、「浅い睡眠」も大事!…知っておきたい8つの新常識
- 第2回睡眠時間が「6時間」では足りないこれだけの理由←今回
- 第3回寝つきの悪さや中途覚醒がつらい! 快眠のために取り入れたい11の工夫
日本人は世界有数の「眠らない民族」 「6時間眠ればOK」ではない
日本人は世界有数の“短眠民族”だ。OECD(経済協力開発機構)が2018年に行った調査によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、加盟33カ国の中で最も短かった。「令和元年国民健康・栄養調査」によると、成人の男女ともに約4割(男性の37.5%、女性の40.6%)が6時間未満しか眠っていない。
必要な睡眠時間は個人差が大きいと聞き、「自分はショートスリーパーだ」と思っている人も少なくないようだ。ところが、実際に4時間程度の睡眠で足りるショートスリーパーは成人の数%程度しかいない。睡眠不足が続くと、その状態に体が慣れて感覚がマヒしていくだけで、脳は適応できず、“睡眠負債”がたまるほど能力は低下していく(詳しくは第1回参照)。
睡眠中は、体も脳も休む「ノンレム睡眠」と、体だけが休んで脳は活動して夢を見ている「レム睡眠」が交互に表れ、レム睡眠のときは目が覚めやすい。1回のサイクルを平均すると90分前後になるが、それはあくまで平均値。個人差も大きく、同じ人でも日によって変わってくる。だが、第1回でも解説したように、「睡眠は90分単位がいい」と誤解している人は少なくない。

この「睡眠は90分単位がいい」の誤解も手伝ってか、「6時間眠れば大丈夫だ」と思う人も少なくないようだ。だが、平日は6時間睡眠で問題なく過ごしていても、休日に少しでも睡眠時間が延びるようなら、実は睡眠時間が不足しており、“睡眠負債”がたまっている証拠だ。
米国の国立睡眠財団は、多くのエビデンスをもとに、18~64歳の成人に「7~9時間」、65歳以上の高齢者には「7~8時間」の睡眠時間を推奨している(*1)。つまり、「7時間以上眠った方がいい」と言っているわけだが、なぜ5時間や6時間では足りないのだろうか?
今回はその理由となる主なエビデンスを、残る3つの「新常識」とともに紹介していこう。睡眠不足が関係する怖い病気は、主に以下のようなものだ。
