40代、50代…年代別に人間ドックで受けたいオプション検査とは?
第2回 年齢・リスク別 お勧め検査を一挙紹介!
荒川直樹=科学ライター
自らの健康チェックと病気の早期発見に威力を発揮する人間ドック。コロナ禍における“受診控え”の影響で、早期がんの診断件数の減少が問題化している今、自分の健康に密かに黄色信号が灯っていないか、総点検をしてみてはどうだろうか。特集第2回となる今回は、年代別、リスク別に人間ドックで受けておきたいオプション検査を紹介していく。
『最新版・人間ドックの上手な受け方』 特集の内容
- 第1回今こそ人間ドックへ! 費用対効果の高い「お勧め検査」7選
- 第2回40代、50代…年代別に人間ドックで受けたいオプション検査とは?←今回
- 第3回「心臓」「がん」「脳」 人間ドックで注目の最新検査はどう受ける?
病気を早期に発見する検査、将来発症するかもしれない病気のリスクを知る検査など、さまざまな検査を一度に受けられる「人間ドック」。その基本的な検査項目の中には、職場の健康診断や自治体のがん検診などではカバーしていない検査(例えば、眼底検査、腹部超音波〔エコー〕検査など)も含まれ、さらに、オプションとして提供される検査の中から、自分の年齢や健康状態、心配事に合わせた検査を選んで組み合わせることができる。

しかし、選択肢が豊富であればあるほど、自分はどんな検査を受けたらいいのか、迷うことも多いだろう。費用や時間にも限りがある中、どのような点に注意して検査コースやオプション検査を選べばいいのだろうか。また、検診結果のどんなところに特に注目すべきなのだろうか。
そこで今回は、第1回で紹介した「比較的手軽で有用性の高いお勧め7検査」を含め、年代ごとに重要度の高い検査を、引き続き日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニックの畑啓介院長に解説していただこう。自分に合った検査を効率よく受けるために参考にしてほしい。
自分のリスクを把握するために欠かせない「家族歴」
畑院長は、「人間ドックを受けるに当たって、まず確認しておいてほしいことがあります」と話す。それは「家族歴」だ。
家族歴とは、近親者が患った大きな病気、例えばがんや心筋梗塞、糖尿病などのことだ。「遺伝が関係している病気にはさまざまなものがあり、受診者ごとに異なる病気リスクを判断する上で、家族歴の把握は重要な役割を果たします。自分の両親の病気も知らない人は少なくないのですが、できれば親・兄弟姉妹以外に、祖父母、おじ、おば、甥、姪の病歴を事前に調べておくといいでしょう」。畑院長はそうアドバイスする。
最近では外傷や感染症以外の病気の多くで遺伝が関与していることが分かってきている。例えば、近親者に大腸がん患者がいるなら、大腸内視鏡検査は積極的に受けたい(それぞれの対応については後述)。遺伝が関与する代表的な病気には以下のようなものがある。
遺伝が関与している代表的な病気
乳がん
第一度近親者(親や兄弟姉妹)に乳がん患者がいる場合は、いない場合と比較して乳がんを発症するリスクが2倍、第二度近親者(祖父母など)の場合は1.5倍になる(「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版」より)。
大腸がん
第一度近親者(親や兄弟姉妹)に大腸がん患者がいる場合は発症リスクが高いと考えられている。大腸がんの20~30%は血縁者に多発することが知られており、5%未満では関連する原因遺伝子が明らかになっている。特に第一度近親者が「50歳以下」で発症している場合は遺伝性の大腸がんの疑いが強い。
糖尿病
ブドウ糖をコントロールするインスリンの分泌の低下や生活習慣の悪化(内臓脂肪の蓄積や運動不足)などが原因で起こる2型糖尿病は、患者の兄弟姉妹で2~3倍発症しやすいことが知られている。また、両親とも糖尿病である場合は、発症リスクが3~4倍高まるという報告もある。
心筋梗塞 など
コレステロール値の高い人のなかには「家族性高コレステロール血症」という遺伝性疾患の場合があり、心筋梗塞などの冠動脈疾患(心臓に栄養を送る血管である冠動脈が狭くなったり詰まったりする病気)のリスクが高くなる。学校健診などで見つかることも多いが、見逃されている場合もある。第一度近親者(親や兄弟姉妹)が若くして狭心症や心筋梗塞を発症している場合は、20代や30代でも心筋梗塞を起こす例がある。
ワンポイント解説
「親等と近親の違いは?」
血縁関係の近さを示す用語として法律の世界では「親等」という表現を用いるが、遺伝的な近さとは異なる。遺伝的な近さを示す場合は「近親」という表現を用いる。「第一度近親者」は親、子、兄弟姉妹のことで、遺伝情報の半分が同じだ。「第二度近親者」は、遺伝情報の4分の1が同じである祖父母、おじ、おば、甥、姪、孫を指す。
「病気のリスクは、こうした家族歴のほか、年齢、肥満の有無、食生活や運動不足などの生活習慣によって異なります。また、30代の人と50代の人では、病気の早期発見や予防につながる検査の重要性は異なります」と畑院長は話す。
では具体的に、年代ごとにどのような検査を受けていけばいいのだろうか。