股関節を“若返らせる”2つのストレッチと3つの筋トレ
第2回 股関節の可動域を広げ、しなやかさを保つためにできること
田村知子=ライター
一生、自分の足で「歩く力」を維持するために、重要な役割を果たす「股関節」。本特集の第1回では、健康寿命に大きく関わる股関節の構造や、股関節に起こりやすい不調やトラブルを解説した。第2回となる今回は、しなやかな股関節を保つためのストレッチ、股関節を支える筋肉を強化する筋力トレーニングのほか、一生自分の足で歩くことを目的に股関節疾患の第一人者が開発した医学体操を紹介していく。
『健康寿命を延ばす「股関節」体操』 特集の内容
- 第1回健康長寿の要! 「股関節」を鍛えて生涯現役の体をつくろう
- 第2回股関節を“若返らせる”2つのストレッチと3つの筋トレ←今回
- 第3回股関節を守る鉄則を伝授! 人工股関節のメリット・デメリットは?
太もも裏の筋肉が硬いと股関節も硬く、腰痛になる
上半身と下半身をつなぎ、さまざまな動作の要となる股関節には、常に大きな負荷がかかっている。前回、加齢とともに関節部分を覆う軟骨がすり減ってくると、痛みや違和感が生じてくることを解説した。
日本股関節研究振興財団理事長で、上馬整形外科クリニック院長の別府諸兄先生はこう解説する。
「股関節に不具合が生じると、その可動域が狭くなったり、痛みが出たりすることで、動かさなくなってしまう。それが、股関節周辺の筋肉の萎縮や筋力の低下につながり、股関節がさらに不安定になる悪循環に陥り、姿勢の維持や歩行にも支障を来すようになります」(別府先生)
別府先生のクリニックには、変形性股関節症をはじめとする股関節疾患に悩む人が多く受診する。股関節の変形が進んで強い痛みがあったり、日常生活にかなり支障が出ていたりする場合には手術を検討することになるが、多くの場合はまず、「保存療法」でできる限り痛みを軽減し、股関節の機能を維持して、股関節を支える周囲の筋肉を強化していくという。その上で特に注力しているのが、運動療法だ。
現時点では特に股関節の痛みや違和感がなくても、股関節をあまり動かさないでいると、不調が起きるリスクは誰にでもある。そのサインの1つが「腰痛」だ。腰痛に悩む人は非常に多いが、その原因は腰だけでなく、骨盤や股関節、その周囲の筋肉が関係していることも少なくない。
特に「仕事や日常生活で座る姿勢を長くとっている人は要注意」だと、別府先生は指摘する。
座るときにはやや腰を丸めた姿勢になりがちで、骨盤が後ろに傾くと同時に股関節が屈曲し、太ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)が緩んで短くなった状態で硬くなる。ハムストリングスは大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋の3つの筋肉の総称で、股関節を伸展させたり、膝関節を屈曲させたりする働きを担っている。ハムストリングスが緩んで短くなった状態が長く続くと、その状態で硬くなってしまい、股関節の動きが悪くなったり、骨盤が前傾しにくくなったりすることで、腰椎にかかる負担が大きくなり、腰痛を引き起こしやすくなるのだ。
ここで、股関節のしなやかな動きにも関わるハムストリングスの柔軟性をチェックしてみよう。足を腰幅に開いて立ち、息を吐きながらゆっくりと腰を前屈させる。膝を伸ばした状態で、手の指先は床につくだろうか。
