健康長寿の要! 「股関節」を鍛えて生涯現役の体をつくろう
第1回 股関節の不調を放置するとさまざまな悪影響が起きる
田村知子=ライター
健康で自立した生活を送るためには、「歩く力」を維持することが不可欠だ。その基盤となるのが、上半身と下半身をつなぎ、全身の動きの要となっている「股関節」。股関節の衰えは、姿勢や歩行に大きく影響し、腰痛や転倒・骨折などを引き起こす原因にもなる。本特集では、股関節を健康に保つ秘訣や、股関節の状態を整えるストレッチ・筋力トレーニングなどを、日本股関節研究振興財団理事長で、上馬整形外科クリニック院長の別府諸兄先生に指南していただく。
『健康寿命を延ばす「股関節」体操』 特集の内容
- 第1回健康長寿の要! 「股関節」を鍛えて生涯現役の体をつくろう←今回
- 第2回股関節を“若返らせる”2つのストレッチと3つの筋トレ
- 第3回股関節を守る鉄則を伝授! 人工股関節のメリット・デメリットは?
股関節は、健康長寿の「要」

立つ、座る、かがむ、歩く――私たちが日常で何気なく行っている姿勢や動作は、「股関節」によって支えられているところが大きい。だが、それを意識している人は少ないかもしれない。
日本股関節研究振興財団理事長で、上馬整形外科クリニック院長の別府諸兄先生はこう話す。
「人間が2本の足で立ち、歩くために、最も重要な役割を果たしているのが『股関節』です。股関節に不具合が生じると、その可動域が狭くなったり、痛みが出たりすることで、体を動かすのがおっくうになってしまう。すると、股関節周辺の筋肉が衰え、姿勢の維持や歩行が困難になり、日常生活に支障を来すようになります」(別府先生)
日本股関節研究振興財団は、東京慈恵会医科大学整形外科元主任教授で、股関節疾患の第一人者とされる故・伊丹康人先生が1987年に創設。故・伊丹先生は74歳で上馬整形外科クリニックを開設し、100歳を超えても診療を続け、股関節疾患の治療や、股関節疾患の進行を予防する医学体操の指導に尽力された。別府先生は、聖マリアンナ医科大学整形外科主任教授を退職後にその任を引き継ぎ、股関節に関連するさまざまな不調や疾患を改善するための診療や活動を行っている。
下肢の股関節、膝関節、足関節と、上肢の肩関節、肘関節、手関節は、「六大関節」と呼ばれるが、その中でも足の付け根にある股関節は最も大きく、さまざまな方向に動く構造をしている。構造については後述するが、上半身と下半身をつなぎ、体を支える股関節には、常に大きな負荷がかかっているのだ。
「人が両足で立っているときには、左右の股関節にそれぞれ体重の2分の1の負荷がかかっています。片足で立つときには、体重の4分の3の負荷がかかります。歩き出すと加速度が加わって体重の4~5倍の負荷が、階段の上り下りを行うときには体重の6〜7倍の負荷が、跳躍するときは体重の12倍もの負荷がかかることになります」(別府先生)
