高LDLコレステロールは放置NG! 下がりきらないときは薬も活用
第3回 早期発見・治療が大切なケースも見逃さないで!
伊藤和弘=ライター
LDLコレステロール値やHDLコレステロール値に問題がある「脂質異常症」は、糖尿病や高血圧と同じ生活習慣病。食事や運動などの生活習慣を見直すことで数値が改善することも多いが、効果がすぐに出やすい中性脂肪と違って、LDLコレステロールは簡単には下がらないこともある。その場合は、薬の力を上手に使ってコントロールしていくことになる。また、中には生活習慣改善の効果を見るまでもなく「すぐに薬を飲むべき」人たちもいる。それはどういう場合なのか? 最終回となる今回は「コレステロールを下げる薬物療法」について解説しよう。
『血管寿命を延ばすコレステロール対策』 特集の内容
- 第1回LDLコレステロールは動脈硬化の主犯格! 軽く見ると血管老化の原因に
- 第2回コレステロール値を改善するには? 悪玉と善玉で異なる生活習慣のポイント
- 第3回高LDLコレステロールは放置NG! 下がりきらないときは薬も活用←今回
生活習慣だけで数値が改善しない場合は「薬の治療」へ
コレステロールの数値に問題がある場合、まずは食事や運動といった生活習慣の改善に努めることが基本だ。LDLコレステロールなどの悪玉コレステロールも、HDLコレステロールのような善玉コレステロールも、多くの場合、生活習慣を修正していくだけで数値をある程度改善させることはできる(前回記事を参照)。
LDLコレステロールが高い場合、まず着手すべきは「食事」の改善だ。動物の肉や乳製品に多く含まれている飽和脂肪酸、そして卵やレバーに多いコレステロールの摂取をできるだけ控えよう。LDLコレステロールが高い(140mg/dL以上)人は食品に含まれるコレステロール摂取量を1日200mg未満にすることが推奨される。

LDLコレステロールを含めた“悪玉脂質の集まり”を指すnon-HDLコレステロールや、“超悪玉”と呼ばれるsmall dense LDLが多い場合は、中性脂肪を増やさないようにすることが大切だ。食事の量、とりわけ糖質とアルコールをとりすぎないように気をつけながら、有酸素運動をして中性脂肪を燃やしていけばいい。
善玉のHDLコレステロールが40mg/dLを切った「低HDLコレステロール血症」の場合も、ジョギングや水泳などの有酸素運動が有効だ。そして喫煙者には、禁煙が求められる(ここまでの話の詳細は、前回記事をご参照ください)。
しかし、「体質もあるので、生活習慣さえ変えれば誰でも、必ず、すぐに数値が改善するとは限りません。特にLDLコレステロールは生活習慣の見直しだけでは十分な効果が出ないことも少なくなく、『もっと数値を下げる必要があるのに、食事や運動だけではそこまで下がらない』といったケースも見られます。まず3~6カ月ほど生活習慣の改善に励んでみて、あまり成果が出ない場合は、生活習慣の改善と併せて薬物療法を行います」と、コレステロールに詳しい千葉大学大学院医学研究院教授の横手幸太郎さんは指摘する。

薬と聞くと、「できれば飲みたくない」と思う人も多いかもしれない。だが、食事の改善など、やるべき対策は分かっていても、それをなかなか徹底できなくて数値が下がらないという人は、薬を上手に活用することも検討してほしい。
また、「コレステロール値が高くても特に体調が悪くはないので、薬を飲む必然性を感じない」という人もいるかもしれない。だが、後述するように、LDLコレステロールをしっかり下げることで心筋梗塞などのリスクを減らせることは確認されている。薬を活用してでもLDLコレステロールを低い状態にキープしておくことは、極めて大事なことなのだ。
それでも、コレステロールの薬について、「一生飲み続けなければならないのではないか」「大きな副作用があるのではないか」「どのくらい効果があるのか」など、疑問や不安を抱く人もいるだろう。そこで、次ページ以降でLDLコレステロールの薬の効果や副作用、薬による治療がすぐにでも必要なのはどんなケースかなどについて解説する。