コレステロール値を改善するには? 悪玉と善玉で異なる生活習慣のポイント
第2回 LDLコレステロールは食事の見直し、HDLコレステロールは食事より運動
伊藤和弘=ライター
コレステロールや中性脂肪といった血中脂質の数値に問題がある「脂質異常症」は、血管の老化、ひいては全身の老化に影響を及ぼし、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める。血中脂質の中でも特に注意すべきはLDLコレステロールなどのいわゆる悪玉コレステロールだ。だが、LDLコレステロールの数値を生活習慣の改善だけで下げるのは一筋縄ではいかない。また、LDLコレステロールと、それ以外の脂質では対処法が異なる。では、それぞれ具体的にどう対処すればいいのか。脂質の種類別に数値改善のポイントを紹介する。
『血管寿命を延ばすコレステロール対策』 特集の内容
- 第1回LDLコレステロールは動脈硬化の主犯格! 軽く見ると血管老化の原因に
- 第2回コレステロール値を改善するには? 悪玉と善玉で異なる生活習慣のポイント←今回
- 第3回高LDLコレステロールは放置NG! 下がりきらないときは薬も活用
LDLコレステロールは運動や減量では減りにくい
動脈の血管が厚く硬くなり、内壁にプラーク(コブ)ができて血液の通り道が狭くなる「動脈硬化」。その危険因子には、脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、加齢などがあるが、そのうち“主犯格の一つ”と位置付けられるのが脂質異常症、特にLDLコレステロール値の上昇だ。
「LDLコレステロールは直接血管の中に入り込んで血管を盛り上げる。つまり、LDLコレステロールがなければそもそも血管にプラークができないという意味で、LDLコレステロールは“動脈硬化の源(みなもと)”と言える」(千葉大学大学院医学研究院教授の横手幸太郎さん)からだ。中性脂肪など他の血中脂質と比べて、LDLコレステロールが高いときが最も動脈硬化を進めることも分かっている(前回記事を参照)。
実際、LDLコレステロールが高いほど心筋梗塞の発症リスクは高くなっていく。40~60代の日本人8131人を対象にした疫学調査によると、LDLコレステロールが80mg/dL未満の人に比べて、高LDLコレステロール血症(140mg/dL以上)の人の心筋梗塞の発症率は3.8倍高いことが確認されている(*1)。

動脈硬化を進めないようにするためには、LDLコレステロールが増えすぎた状態を放置せず、生活習慣などで改善する必要がある。だが、前回説明した通り、LDLコレステロールの数値を生活習慣の改善だけで下げるのは一筋縄ではいかない。中性脂肪のように、食べ過ぎを抑えて、運動すれば確実に減るわけではなく、なかなか数字が改善しないことが多いのだ。
運動をすればLDLコレステロールが確実に下がるわけではないのには、理由がある。筋肉のエネルギーとして使われる中性脂肪と違って、コレステロールは細胞膜やホルモンの材料になるもの。運動しても使われるわけではないので、運動だけで下げるのは難しいのだ。
コレステロールを減らすには内臓脂肪を減らすのが大切だと考えて減量に励む人も多いが、これも効果は限定的だ。一般に太った人が減量して内臓脂肪が減ると、中性脂肪値は改善するが、LDLコレステロールは必ずしも内臓脂肪と直結しない。遺伝や体質の影響もあるため、内臓脂肪を減らしてもLDLコレステロールが下がるとは限らないのだ。
では、LDLコレステロールを生活習慣の改善で減らすにはどうすればいいのだろう。また、前回述べた通り、血液の中にはLDLコレステロール以外にも“悪玉”と呼べるものがある。「悪玉の集まり」を指す「non-HDLコレステロール」に含まれるレムナントや、通常のLDLより直径が小さくて血管壁に潜り込みやすく、動脈硬化を進める作用が強いため“超悪玉”とも呼ばれる「small dense LDL」だ。こうした悪玉脂質を減らす方法や、善玉といわれるHDLコレステロールを増やす方法はLDLコレステロール対策と同じでいいのだろうか。以下のような脂質の種類別に、数値を改善する生活習慣のコツを見ていこう。
【コレステロールの種類別 生活改善のポイントとは?】
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LDLコレステロール(悪玉)が高い場合(140mg/dL以上)
対策の要は「食事」。コレステロールの1日の摂取量は200mg未満に
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non-HDLコレステロール(総悪玉)が高い場合(170mg/dL以上)
LDLコレステロールが低くてnon-HDLコレステロールが高い人は中性脂肪対策を
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small dense LDL(超悪玉)が高い場合
中性脂肪対策と血糖値対策の組み合わせで
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HDLコレステロール(善玉)が低い場合(40mg/dL未満)
「食事より運動」が定石。ウォーキングなどの有酸素運動を