LDLコレステロールは動脈硬化の主犯格! 軽く見ると血管老化の原因に
第1回 コレステロールに関する誤解を解き、正しく対処しよう
伊藤和弘=ライター
血圧とともに、健康診断で多くの人が引っかかるのがコレステロールや中性脂肪だろう。基準値を超えていれば「脂質異常症」という病気である。脂質異常症は、自覚症状はほとんどないが、動脈硬化を引き起こす元凶の一つであり、放っておくと脳卒中や心筋梗塞を起こすリスクが高くなる。脂質の中でも注意すべきは、LDLコレステロールに代表される、いわゆる悪玉コレステロールだ。コレステロールという言葉は広く知られている半面、誤解されていることも多い。本特集では、そんなコレステロールに対する誤解を解き、数値を正常化するための最新の対策を紹介しよう。
『血管寿命を延ばすコレステロール対策』 特集の内容
- 第1回LDLコレステロールは動脈硬化の主犯格! 軽く見ると血管老化の原因に←今回
- 第2回コレステロール値を改善するには? 悪玉と善玉で異なる生活習慣のポイント
- 第3回高LDLコレステロールは放置NG! 下がりきらないときは薬も活用
脂質異常症は血管の老化を進め、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める
健康診断で血液検査を受けると、必ずコレステロールや中性脂肪の数値を調べられる。これらは「血中脂質」と呼ばれ、血中脂質の値に異常が生じる「脂質異常症」は、ご存じの通り糖尿病や高血圧と並ぶ代表的な生活習慣病だ。
しかし“悪玉”といわれるLDLコレステロールや、中性脂肪が基準値を超えても、これといった症状はないため、少々数値が高くても生活習慣を改善することもなく放置している人は少なくない(*1)。特にLDLコレステロールは、多くの人が悩むように生活習慣の改善だけで適正な値に下げるのは難しく、対応がやっかいなところがある。詳しくは後述するが、LDLコレステロール値は、運動したりやせたりしても、そのまま数値が改善しないケースも多いのだ。その根底には下記のような誤解もあり、正しく対処できていないケースも少なからずある(各誤解の詳細については3ページ目以降で解説します)。
コレステロールに関する「よくある誤解」
【誤解1】
運動を実践すれば、LDLコレステロールは確実に下がる
【誤解2】
卵は1日に何個食べても大丈夫
【誤解3】
LDLコレステロールは「少し高いほうがいい」「下げすぎても良くない」
【誤解4】
コレステロールは数値よりも悪玉と善玉のバランスが大切
確かに、生活習慣病はかなり進行しなければ症状が出ないものが多く、中でも脂質異常症は、家族性の場合(血縁者である家族に同じ病気が見られる場合)以外は自覚症状がまったくないケースが大半だ。いくらコレステロールが高くなっても体調は変わらない。しかし、だからといって軽く見るのは禁物だ。あなたが異常値を気にせず過ごしている間にも、脂質異常症は確実に動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めているからだ。
動脈硬化は動脈の血管が硬くなり、血液の通り道が狭くなった状態を指し、いわば「血管が老化した状態」のこと。動脈は酸素や栄養分を全身に送る重要な役割を担っており、その血管が老化することは、全身の老化を推し進めたり、健康寿命を短くしたりする大きな要因にもなる。
動脈硬化を進める危険因子には、糖尿病や高血圧などもあるが、コレステロールはより密接に関わっている。動脈硬化にはいくつかのタイプがあるが、大部分を占めているのが「アテローム性動脈硬化」と呼ばれるものだ。このアテローム性動脈硬化は血管内部にプラークというコブができることで進行する。そして、このプラークは、脂質の一種であるLDLコレステロールをはじめとする、いわゆる悪玉コレステロールによって作られるのだ。どういうことか、もう少し詳しく説明しよう。