老化を加速する「糖化」の恐怖 生命活動を担う重要なたんぱく質も餌食に
第1回 血管、肌、骨、内臓に影響を与え、老化を進める
柳本操=ライター
近年、老化の元凶の1つとして考えられるようになった「糖化」。その影響は、肌やしわなどの見た目のほか、血管や臓器、関節、骨にまで及ぶ。一方、老化研究が世界的に進んだことで、糖化を防ぐ方法も具体的に分かってきた。この特集では、糖化研究の第一人者である昭和大学医学部教授の山岸昌一さんに、そもそも糖化とはどのような現象か、私たちの体にどのような悪さをするのか、どのように防げばいいのかについて聞いていこう。
『老化の元凶「糖化」の防ぎ方』 特集の内容
- 第1回老化を加速する「糖化」の恐怖 生命活動を担う重要なたんぱく質も餌食に←今回
- 第2回糖化は感染症の重症化や脳の老化にも関わる リスクが高い人の特徴は?
- 第3回知っておきたい糖化を進める食品、抑える食品、そして「NGな食べ方」
老ける人、老けない人。その違いを「糖化」から読み解く

老化の元凶の1つとしてよく知られるようになった「糖化」。糖化研究の第一人者である昭和大学医学部教授の山岸昌一さんは、「糖化という視点からいうと、残念ながら人は見かけです」と話す。つまり、糖化の影響で体内の老化が進んでいる人は、肌やしわなどの見た目にそれが表れているというのだ。
年を取ることは誰もが避けられないが、老化のスピードは人によって差があることが分かってきた。中高年になれば、同じ年齢の人でも、見た目に10歳、20歳の差があることも不思議ではない。しかもそれは、見た目だけでなく、内臓や血管、代謝や心肺機能の能力においても差ができてしまっている。
様々な研究から、老化に対する遺伝子の影響は25%程度で、残りの75%程度は生活習慣や環境によって変わることが明らかになってきた(参考記事「老化スピードの個人差なぜ? 30歳の差も 抗老化研究の最新事情」)。生活習慣の影響を最も受けやすいものの1つが、食事からとる「糖質」が原因で起こる糖化だ。
糖化とはそもそもどのような現象なのか。この点から山岸さんに聞いていこう。
中高年以降になると、「老化」というキーワードがリアルに感じられるようになります。同じ年齢でも見た目にずいぶん差があったり、数年前の自分の写真と鏡に映った自分を比べて「老けたなぁ」と実感したり……。その背景に「糖化」が関わっていることが分かってきました。
山岸昌一さん(以下、山岸) ご指摘の通り、老化と「糖化」は密接につながっています。老化スピードは、下の模式図のように、40歳を過ぎたあたりから個人差が出始め、年齢を重ねるとともにその差が大きく開いていきます。
