NGSは薬の進化ももたらしたのですか。
奥 そうです。代表的なのが、がん治療で用いられる「分子標的薬」と「免疫チェックポイント阻害剤」。がんは、人類にとって最大の難敵の一つでした。厄介きわまりない病気であった根本的な理由は、その「多様性」にありました。同じ大腸がんでも、病気の進行度合いや治療に対する反応は患者さんによって全く異なり、医師たちは症例ごとに治療法に頭を悩ませなければいけませんでした。しかし、遺伝子に直接アプローチする治療薬、治療法が確立されたことによって、がんの多様性はそれほど大きな障壁ではなくなったのです。