「筋肉の質の低下」なぜ起こる? 加齢と運動不足が招く負のスパイラル
第2回 筋肉の中に脂肪が“サシ”のように入り込むと、機能低下が起こる
梅方久仁子=ライター
年齢とともに、筋肉量の低下よりも先に起こってくる、筋肉の「質(機能)」の低下。筋肉の質の状態を反映するのは筋力だが、そもそもなぜ、どのようなメカニズムで筋肉の機能低下が起きてくるのだろうか。そこには、“サシ”のように筋肉の細胞の中に入り込む、脂肪の存在がある。
『今、必要なのは「質の良い筋肉」!』 特集の内容
- 第1回大事なのは「質の良い筋肉」! 質の低下示す危険なサインとは
- 第2回「筋肉の質の低下」なぜ起こる? 加齢と運動不足が招く負のスパイラル←今回
- 第3回筋肉の質を高めるには週2~3回の「ウォーキング+筋トレ」
丈夫な足腰を保ち、いつまでも元気で自立した日常生活を送るためには、筋肉の「量」だけでなく、「質」を維持することが大切だということを、本特集の第1回でご紹介した。筋肉の質の状態を反映するのは「筋力」だ。筋肉の量が十分にある人でも、加齢とともに筋力は落ちていく。これは、筋肉の機能低下が起きていることを意味している。
第2回となる今回は、第1回に引き続き、同志社大学スポーツ健康科学部教授の石井好二郎さんへの取材をもとに、この機能低下がどのようなメカニズムで起きているのかを掘り下げていく。機能低下の原因とメカニズムを知ることは、筋肉の質の低下を防ぐ対策に直結するだけに、ぜひとも押さえておきたい。
合成と分解のバランスが崩れると、筋肉量が減る
まず、筋肉の「量」はなぜ減少するのかについて見ていこう。骨格筋は、筋線維という繊維状の細胞が集まって構成されている。筋線維の束は筋束(きんそく)と呼ばれ、全体は筋外膜で覆われている。筋肉の量が増えるというのはこの筋線維の1本1本が太くなることで、筋肉が減るというのは、筋線維が細くなることを意味する。

他の多くの組織と同じように、筋肉は絶えず新しい筋線維の合成と古くなった筋線維の分解を繰り返している。ところが年をとると、この合成が滞り、分解のほうが進むようになる。そのため、普通に生活していても、全体の量が徐々に減っていってしまう。
筋肉の合成が減少したり、分解が増加したりする理由には、次のようなものがある。

まず、身体活動量について。一般に、年をとると激しい運動をする機会が減っていく。筋肉は、運動によって刺激を受けることで合成が促される(筋線維が太くなる)。強い運動や身体活動が減ると、筋肉への刺激も減り、筋線維の合成が減ってしまう。また、年をとると、中枢神経の中にある神経線維も減少する。その結果、運動をした際に筋肉に伝わる神経刺激も低下し、合成量が減っていく。