「おしりのトリセツ」第2回は、正しいおしりの洗い方と拭き方についてクローズアップ。「おしりを清潔にしようとして、よかれと思って洗いすぎ・拭きすぎている人が多い。強く刺激することで肌の皮脂膜が失われると免疫機能や再生力も損なわれ、細菌やウイルス感染、痔の悪化にもつながる」と、皮膚科にも詳しい大阪肛門科診療所副院長の佐々木みのりさん。あなたのおしりとの付き合い方を見直してみよう。
『人に聞けない「おしり」のトリセツ』 特集の内容
- 第1回間違ったおしりのケアが、かゆみや痔を招く
- 第2回正しいおしりの拭き方とは? 2週間、「洗う」のはやめる←今回
- 第3回おしりトラブルのルーツを断つ! 正しい排便習慣の取り戻し方とは

おしりの洗いすぎはかゆみや痛みの原因に
おしりを清潔にしようとするあまり、洗いすぎることによって、肛門のかゆみや痛みの原因となる皮膚の炎症を起こす人が増えているという。前回の「洗いすぎチェック」をやってみて、自分がなにげなく続けていた習慣が「洗いすぎ」に当てはまっていたことに気づき、驚いた人もいるかもしれない。
「肛門の皮膚はとてもデリケートで、ステロイド軟膏などの薬の成分の浸透率も、おでこの20倍とされるほど。しかし、日ごろ目で見ることができないために異変が起こっていてもそれが自分のケアの間違いだと気づかない場合が多い」と、大阪肛門科診療所副院長の佐々木みのりさんは注意を促す。
おしりを洗いすぎると、最初に感じることが最も多いのが「かゆみ」だという。かゆいのは不潔にしていたからだと思って余計に熱心に洗うようになる。すると、肛門周囲の皮膚が傷ついてかゆみが増してくる。「指でかきこわすようになり、『かゆい』がひりひりした痛みに変わる」(佐々木さん)。
すると、温水便座で洗浄するときに飛び上がるほどしみるように。ムズムズする、ベタベタする、ぶつぶつができている、股が痛くてしゃがめないなど症状が悪化していく。
「肛門科を受診しづらいから、と、膣カンジダ症の治療薬である抗真菌薬や、デリケートゾーン用の市販軟膏で対処する人もいますが、一瞬効いたように思えても、原因の洗いすぎや出残り便秘が改善されないかぎり、かゆみは繰り返します。適切ではない薬を使い続けると皮膚が薄くなってしまい、ちょうどよい便が出ても、おならが出るだけで肛門が切れてしまう、といった弊害が起こります。デリケートな部分ですから、悪化した場合のステロイド剤の使用についても専門家の見極めが重要。セルフケアは2週間まで。それでも症状が改善しない場合は、受診をして適切な薬を処方してもらうことが大切です」(佐々木さん)。
洗いすぎた皮膚がどうなっているかイラストで見てみよう。
洗いすぎるとバリアが低下 神経が伸びて過敏に

皮脂膜が適度に皮膚の表面を覆うことによって、細菌やウイルス、刺激物などの内側への侵入を阻み、水分の蒸発を防ぐ。バリア機能が正常であれば、少し傷ついてもスムーズに再生される。