おしり(肛門)は、目のまわりの皮膚と同じくらいデリケートな部分。「ごしごしこすったり洗いすぎることで、かゆい、痛むといったトラブルを起こす人が増えている。おしりのトラブルは、本来からっぽであるはずのおしりの出口に便が残る『出残り便秘』にある」というのは大阪肛門科診療所副院長で、皮膚科にも詳しい佐々木みのりさん。意外と知らないおしりの仕組み、やってしまいがちな間違ったケアについて教えてもらった。
『人に聞けない「おしり」のトリセツ』 特集の内容
- 第1回間違ったおしりのケアが、かゆみや痔を招く←今回
- 第2回正しいおしりの拭き方とは? 2週間、「洗う」のはやめる
- 第3回おしりトラブルのルーツを断つ! 正しい排便習慣の取り戻し方とは

すっきりいいウンチを出したい、と「腸活」のために食物繊維や乳酸菌をとっていても、「なんとなくすっきり出ないのでおしりが不快」「肛門まわりにかゆみや痛みがある」ということはないだろうか。
「肛門は見えない場所にあるので異変に気づきにくい。かゆい、痛い、ベタベタする、水がしみる、といったトラブルがかなり悪化してから肛門科を受診する人が多い。また、受診が恥ずかしいから、と自己判断で市販の軟膏などを塗り、さらに悪化させてしまう人も後を絶たない」と注意を促すのは、大阪肛門科診療所副院長の佐々木みのりさんだ。
佐々木さんは、近年増加している肛門まわりのトラブルの出発点として、(1)便意を我慢して逃してしまうことと、(2)洗いすぎ、の2つの要因がある、と指摘する。例えば、次の項目に一つでも当てはまれば、洗いすぎだという。
「洗いすぎ」チェック
排便に関係なくトイレに入るたびおしり洗浄をする
温水で刺激しながら排便をする
温水洗浄で温水を15秒以上当てる
肛門にシャワーを直接当てている
肛門や外陰部を石けんやボディソープで洗っている
肛門をウェットティッシュなどで拭いている
(チェックリスト作成:佐々木さん)
おしりは、目の周りと同じくらいデリケート
まず、一つ目の「便意の我慢」について。
肛門は、直腸に便がおりてくると便意をもよおし、括約筋がゆるんで肛門を開き、便を排出した後は閉じる、というふうにできている(次ページイラスト)。ところが、せっかく起こった便意を「あとでトイレに行こう」とか「もうちょっと便意が強まるまで待とう」と我慢してしまう習慣によって、便意が弱り、排出する力も低下してしまう。
このため便がすべて出きらず直腸から肛門内にとどまる「出残り便秘」が起こる。すると、ペーパーで何度拭いても便が拭き取れない、という事態に。温水洗浄の水流を長く当てすぎて、肛門がただれて炎症が悪化していく人も多いという。
「肛門の皮膚は目のまわりと同じぐらい薄くてデリケート。目のまわりに水鉄砲で強い水圧を当て続ける人はいないけれど、同じことを肛門にしてしまっている人は多い。肛門は極力やさしく扱うべき場所、と理解して」(佐々木さん)
あなたも良かれと思っておしりを洗いすぎていないだろうか。冒頭の「洗いすぎチェック」で1つでも当てはまる人は、おしりのケアを基本から見直す必要がある。