高血圧、肥満、首コリ・肩コリ…中高年の不調に効く「部屋トレ」
第3回 血圧が高めの人は「ステップ運動」、肥満の人は「フロントランジ」を
田中美香=医療ジャーナリスト
運動不足が続く今こそ習慣化したい屋内のトレーニング、「部屋トレ」を紹介する本特集。今回のテーマは、目的別の部屋トレだ。高血圧や肥満、首コリ・肩コリなど、中高年の多くが抱く悩みを解消する部屋トレの方法について、書籍『順天堂大学医学部健康スポーツ室式 長生き部屋トレ』監修者の横山美帆さんに詳しく聞いていこう。
『巣ごもり老化を防ぐ 「部屋トレ」の極意』 特集の内容
- 第1回運動不足で進む「巣ごもり老化」 気軽にできる「部屋トレ」でしっかり予防
- 第2回週2~3回でOK!「巣ごもり老化」防止のための部屋トレ術
- 第3回高血圧、肥満、首コリ・肩コリ…中高年の不調に効く「部屋トレ」←今回
運動不足を解消するために、屋内でいつでも気軽にできるトレーニング、「部屋トレ」を紹介する本特集。第1回では、「足の筋力・バランス力・柔軟力・握力」という4つの力の重要性を、そして第2回では基本的な部屋トレの進め方について解説した。誰にでも無理なくできるものばかりなので、「これなら続けられる」と思った人も多いのではないだろうか。こういったトレーニングを着実に継続すれば、効果は少しずつ現れ、「巣ごもり老化」にブレーキをかけることができる。
順天堂大学医学部循環器内科学講座准教授の横山美帆さんは、心血管病(心筋梗塞や脳梗塞など、主に動脈硬化が原因で起きる病気)で治療を受けた人に対して運動療法を指導する循環器内科医。ウォーキングなどの軽い運動でも、毎日続ければ動脈硬化が改善する人が多いという事実を目の当たりにしてきた。もちろん、特に持病がない人も、将来の心血管病の予防のためには早いうちから運動習慣をつけることが極めて重要だと横山さんは話す。
本特集では、猛暑などで外出しにくい状況でも自宅で実践でき、習慣化しやすい運動として、横山さんお勧めの「部屋トレ」を紹介してきたが、トレーニングに求めるゴールは人によって多少異なる。単なる運動不足の解消だけでなく、「血圧を下げたい」「肥満を解消したい」「首コリ・肩コリを解消したい」など、具体的な不調の改善を期待する人もいるだろう。そこで今回は、「目的別」の部屋トレを取り上げる。第2回で紹介した基本的な部屋トレとともに行う、“ちょい足し”の運動として取り入れてみてほしい。
血圧が高めの人は、「ステップ運動」で血管機能を上げる
目的別の部屋トレとして、まずは血圧が気になる人向けの運動から見ていこう。
高血圧といえば通常は140mmHg以上を指すが、これは医療機関で測る場合の基準値(いわゆる「診察室血圧」)。今は自宅で過ごす人も多いと思うので、自宅で測る「家庭血圧」を基準に考えよう。家庭血圧では、上の血圧(収縮期血圧)が135mmHg以上、下の血圧(拡張期血圧)が85mmHg以上で高血圧に該当する(下図)。75歳未満の成人の場合、上下とも10mmHg低い、125mmHg/75mmHg未満まで下げるのが望ましいとされている。

血圧を下げるためには、減塩に代表される食生活の工夫が必須だが、同時並行で進めたいのが運動だ。運動によって血流が増えると、血管の内側の内皮細胞が刺激され、血管をしなやかにする効果のある「一酸化窒素(NO)」が産生される。NOは血管の機能を高め、血管の若返りに効くとも言われる物質。NOが増えれば血管が広がって血流がスムーズになり、血圧が下がりやすくなるのだ。
その作用を生むのが有酸素運動だ。有酸素運動というと、ジョギングやウォーキングなど、屋外で行うものが多い。しかし、「暑い季節に外で運動するのは避けたい」と思う人もいるだろう。そこで部屋の中で可能な、しかも一定の効果を出せる運動として、横山さんはステップ運動を勧める。
ステップ運動とは、階段などの段差を利用し、踏み台昇降のように段差を上がったり下りたりする運動のこと(下図)。背筋を伸ばして段差の前に立ち、右足を段差に乗せたら、左足も段差に乗せて段差の上にいったん両足で立つ。次に右足、左足の順に段差の下に下ろすという動きを、リズミカルに繰り返す運動だ。「この程度の運動でいいのか?」と思うかもしれないが、5分、10分と続けるうちに息が弾み、血流を増やす効果がある。
血圧が高い人向けの部屋トレ(1)
ステップ運動

1
右足を段差に乗せ、左足も乗せて段差の上にいったん両足で立つ
2
次に右足、左足の順に段差の下に下ろす(5~10分続ける)