週2~3回でOK!「巣ごもり老化」防止のための部屋トレ術
第2回 無理せず、力まず、体力レベルに合わせた部屋トレの進め方
田中美香=医療ジャーナリスト
巣ごもり生活による運動不足や座りっぱなしで、多くの人の体の中で「巣ごもり老化」が進んでいる。しかし、今の時期は暑さが厳しく、外で自由に運動するのは難しい。そんな状況下で運動不足を解消するのに最適なのが、屋内で思い立ったときにすぐ行える「部屋トレ」だ。今回は、巣ごもり老化対策として高めるべき4つの力、「足の筋力・バランス力・柔軟力・握力」の順に、部屋トレの基本を見ていこう。
『巣ごもり老化を防ぐ 「部屋トレ」の極意』 特集の内容
- 第1回運動不足で進む「巣ごもり老化」 気軽にできる「部屋トレ」でしっかり予防
- 第2回週2~3回でOK!「巣ごもり老化」防止のための部屋トレ術←今回
- 第3回高血圧、肥満、首コリ・肩コリ…中高年の不調に効く「部屋トレ」
部屋トレは週2~3回、1日1分から始めても大丈夫
コロナ禍で体を動かす機会が大きく減少した今、われわれの健康は危機に直面している。運動を怠ると足腰や心肺機能が衰え、転倒事故によるケガのリスクや、高血圧、脂質異常症、糖尿病のような生活習慣病や、動脈硬化など、さまざまな病気の発症リスクが上がってしまう。このことは、数々の研究報告から明らかになっている事実だ。命を守るために続けた自粛生活で、健康寿命が短縮してしまうという皮肉な事態は何とか避けたいものだ。
だが、この状況を打破しようにも、「真夏の炎天下では熱中症が怖い」と感じ、運動を避けている人もいるかもしれない。そうやって、「じきに外で運動できるようになるだろう」「もっと涼しくなってから」と運動を後回しにすれば、運動不足はさらに蓄積していく。
多くの人がこうした状況に陥っていることに危機感を覚えた順天堂大学医学部循環器内科学講座准教授の横山美帆さんが推奨するのが、思い立ったときに自宅ですぐにできるトレーニング、「部屋トレ」だ。
「本来は屋外で、太陽の光を浴びながらの運動がお勧めです。日光を浴びるとビタミンDが体内で合成され、カルシウムの吸収を促すので、骨粗しょう症の予防にもなります。コロナ禍や猛暑のせいでそれが難しいなら、せめて屋内でのトレーニング、『部屋トレ』を習慣化してはどうでしょうか。週2~3回、1日1分からでいいので、『足の筋力、バランス力、柔軟力、握力』の4つの力を適度に鍛え、落とさないよう維持することをお勧めします」(横山さん)
足の筋力とバランス力、柔軟力、握力、この4つの力の必要性については第1回で解説した通りだ。今回は、コロナ禍、しかも真夏の炎天下という、屋外スポーツがしにくい今こそ取り組みたい、4つの力を高める部屋トレの具体的な方法を見ていこう。
足の筋力をつけるのに最適なのは「スクワット」
ここ数年の筋トレブームで、筋力の大切さは広く浸透してきた。加齢に伴い、運動しない人の筋肉は落ちていくが、運動すれば何歳になっても筋肉はつけることが可能だ。
「若いころと同じ筋肉量を取り戻すのは大変だとしても、現状の筋肉量をキープする程度のトレーニングでも十分意味があります。下半身には、お尻(大殿筋)や太ももの表側(大腿四頭筋)など、体の中でも特に大きな筋肉が集中しているので、下半身を鍛えれば筋肉の量を一気に増やすことができます」(横山さん)
筋肉がつくと筋力が上がることが期待できるだけでなく、「基礎代謝」が上がるのもうれしい効果だ。基礎代謝とは、体温維持など、生命を維持するために最低限必要なエネルギーのことで、呼吸や筋肉の維持にも使われている。筋肉では多くのエネルギーが消費されるため、加齢とともに筋肉が落ちると基礎代謝も落ちるが、筋肉を増やせばそのぶん消費エネルギーが増え、ダイエットにもなるわけだ。
足の筋トレは、年齢を問わずすべての人にお勧めだが、中でも下記のような傾向が出始めた人は特に1日も早く取り組んでほしい。

足の筋肉を鍛える部屋トレの代表は、おなじみの「スクワット」だ。スクワットには、お尻から太ももにかけて、下半身の大きな筋肉を丸ごと鍛える効果があり、屋内で下半身を鍛えるには最良・最強のトレーニングといっていいだろう。しかも、負荷を加えることが容易で、その人に最適なトレーニングにカスタマイズしやすいのも魅力だ。まずは10~15回を1セットとする基本のスクワットを1日2~3セット、週2~3回からスタートしてみよう。
自分の体重だけでは少し物足りないなら、ペットボトル飲料を入れた袋を両手で持って行うなど、少し負荷を加えるといいだろう。このような負荷をかけたスクワットは「ゴブレット・スクワット」と呼ばれ、本格的な筋トレではダンベルなどを胸元に抱えて行う。そこまでいくと初心者には負担となるため、ペットボトルの本数を調整しながら進めてみよう。
「足の筋力」を高める部屋トレ
基本のスクワット

1
腕を胸元でクロスさせ、足は肩幅に開いて立つ
2
床と太ももが平行になるまで(難しければできる範囲でOK)、腰をゆっくり落とす。10~15回を1セットとし、1日2~3セット行う
ゴブレット・スクワット

1
ペットボトル(500mL2本程度)を袋に入れて両手で持ち、足は肩幅に開いて立つ
2
基本のスクワットと同じ要領で、腰をゆっくり落とす。10~15回を1セットとし、1日2~3セット行う
万一スクワットがきついなら、もっと負荷を減らした軽い筋トレに切り替えても構わない。イスからゆっくり立ち上がる動作を繰り返すだけでも大丈夫だ。
注意点は、力まないこと。「筋トレは息を止めて力を入れると血圧が瞬間的に上がってしまうので、力まないよう注意しながら少しずつレベルアップしていきましょう」(横山さん)