老化防止には「プラス15分」の運動を 光との付き合い方もポイントに
第3回 普段運動不足な人ほど、運動で大きな効果が得られる!?
福島安紀=医療ライター
最新のサイエンスで分かってきた老化の制御法を紹介する本特集。今回は、老化の進行を抑え寿命を延ばすことが分かっている「運動」を取り上げる。どのような運動をすれば寿命を延ばせるのか? 慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室特任講師の早野元詞さんに、老化を制御するための運動の取り入れ方、そして、日常生活で意識したい光との付き合い方について解説してもらった。
『見えてきた「老化」の正体』 特集の内容
- 第1回老化スピードの個人差なぜ? 30歳の差も 抗老化研究の最新事情
- 第2回「空腹」が老化を遅らせる! 最新研究で分かった老化を制御する食事術
- 第3回老化防止には「プラス15分」の運動を 光との付き合い方もポイントに←今回
有酸素運動が長寿遺伝子のサーチュインを活性化させる酵素を増やす
「最近忘れっぽい」「老眼で近くの文字が見えない」――。こうした老化現象を本人が意識する前から、実は、細胞レベルでの老化は始まっている。この老化のスピードには、遺伝以外の要因が強く影響しており、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でも寿命には違いがあることや、見た目が老けていると若々しい人より早死にする確率が高く、体の中の老化も進んでいる可能性があることが分かってきた(第1回参照)。
信頼性の高い老化制御法として、世界中の研究成果を基に米国立老化研究所(NIA)が2014年に発表したのが、前回紹介した「ライフスパンを延ばす7つのメソッド」(*1)だ。NIAは、マウスで寿命を延ばす効果が示されている免疫抑制剤の「ラパマイシン」、体の中にたまった老化細胞を除去する可能性がある「メトホルミン」といった薬剤とともに、食に関する項目を4つ挙げている。

その4つとは、栄養バランスを損なわずに1日の摂取カロリーを抑える「カロリー制限」、1カ月のうち5日間だけ食事の摂取量を減らすなどの「断食」、赤ワインなどに含まれるポリフェノールの「レスベラトロール」、納豆などの発酵食品に多く含まれる食品成分の「スペルミジン」だ。
2014年以降の抗老化研究によって、長寿遺伝子のサーチュインを活性化させる「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」や「NR(ニコチンアミドリボシド)」といったサプリメントや、鶏の軟骨や皮、牛スジなど動物性コラーゲンに多く含まれるアミノ酸の「グリシン」も、摂取によって健康寿命を延ばすことが期待されている(第2回参照)。
「空腹になってから食事をとり、腹八分目を心がけるだけでも、使用済みとなったタンパク質をリサイクルするオートファジーという機能が働き、長寿遺伝子のサーチュインが活性化して老化の進行抑制を期待できます」と早野さんは説明する。
そして、もう一つ、NIAが「ライフスパンを延ばす7つのメソッド」の中で、心血管疾患、糖尿病、サルコペニア(筋力低下および身体機能の低下)、うつ病を予防し、健康寿命や最大寿命を延ばす方法の一つとして勧めているのが、運動だ。本特集の最終回となる今回は、少しでも老化の進行を抑えるためには、どのような運動がよいのか見ていこう。