「腸」や腸内細菌のバランスが、メタボや生活習慣病、認知機能などにも関係することがわかってきたことから、今、世界中の医療関係者が「腸」に注目している。では、腸から健康になるためには何を食べ、どのような生活を送ればいいだろう。そんな食品の選び方や習慣づくりに役立つ、「腸の最新情報」を紹介していこう。さらに「腸活」にピッタリの3つの最強食材も併せて紹介しよう。
『腸活の新常識』 特集の内容
- 第1回健康もアンチエイジングも「腸」から! カギは“腸内発酵”にあり
- 第2回「腸活」に最適! 3つの最強食材とは? 腸と腸内細菌の秘密←今回

最新研究からわかった「腸と健康の関係」
肥満や糖尿病、新型コロナ感染症──さまざまな病気や不調と腸との間に何かしらの関連性がありそうということはわかってきた。だが、「いい腸とは何か」「いい腸を作るにはどうしたらいいか」はまだ曖昧なままだ。
ただ、ここに来てようやく食事と病気、腸内細菌パターンの関連を示す研究報告などが増え、目指すべき方向が見えてきた。
最新研究からわかってきた「腸の秘密」を簡単に紹介していこう。
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新型コロナの重症度にも関与
盲腸は無用の長物ではない?
腸全体が「免疫機能を強化する道場」だった
腸が免疫において重要といわれるのは、なんといっても小腸に「パイエル板」があるからだ。パイエル板は、腸管内を通る物質を取り込み、全身から集まってくる免疫細胞にその情報を伝達。病原体の排除に向け、全身でスタンバイさせる。腸や血管、目や鼻、口の粘膜などで、異物の侵入を防ぐIgA抗体産生細胞もこのパイエル板で成熟する。

だが、実は、大腸にもパイエル板ほどの大きさではないが、似た働きをする組織があるという。「大腸に点在するリンパ濾胞(ろほう)と呼ばれる組織がそれ。大腸の入り口である盲腸にもあり、盲腸を切除するとIgA産生が減り、腸内フローラのバランスが崩れることが動物試験で確認されている」と慶應義塾大学の福田真嗣特任教授は説明する。

新型コロナウイルス感染症に関する調査の中には、腸内細菌の多様性の低下が、ウイルス感染後の重症化に関係することを示唆する報告があるが、「ここに大腸内IgAが関わっている可能性もある」と福田特任教授。
では、IgA産生を高めるために我々にすぐできることはあるだろうか。「大腸でのIgA産生を増強する要因のひとつが、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸。短鎖脂肪酸は主に食物繊維やオリゴ糖を腸内細菌が発酵することで作られる」と福田特任教授はいう。実際に食物繊維の摂取で、大腸内や唾液中のIgA量が増えるという報告があるという。新型コロナの感染対策の意味でも、食物繊維をしっかりとるとよさそうだ。
食物繊維をたくさんとると生まれる子どもがやせ体質に?!
妊娠期に食物繊維を多くとっていると、生まれる子どもが太りにくい体質になる可能性があることがマウスの研究からわかってきた。この研究では、母マウスが食物繊維をたくさんとっていると、子マウスが胎児の段階で、全身に「短鎖脂肪酸」の受容体が通常より多く発現した。短鎖脂肪酸がこれらの受容体に結合すると、脂肪を燃焼したり、脂肪を蓄積しにくくする働きが高まることが、これまでの研究で確認されている。短鎖脂肪酸は食物繊維を腸内細菌が発酵することで腸内で増えることから、母親の食事の影響を受け、胎児の体に短鎖脂肪酸に対する準備が整ったと考えられる。実際に、食物繊維をたくさん食べた母親から生まれた子マウスは、高脂肪食で育てても太りにくかったという。