「健康もアンチエイジングも、まず腸から」というのが今や常識。様々な研究から、太りやすさ(肥満)、免疫、糖尿病などの生活習慣病、さらには認知症との関連が示唆されている。では、どうしたら健康な腸を維持できるのだろうか。そのカギとなるのが、腸内細菌のエサになる「発酵」する食物繊維。最新研究結果に基づいた「腸活の新常識」と、発酵性食物繊維を上手にとれる、“スープのプロ”考案のおいしい「腸活スープ」を紹介していこう。
『腸活の新常識』 特集の内容
- 第1回健康もアンチエイジングも「腸」から! カギは“腸内発酵”にあり←今回
- 第2回「腸活」に最適! 3つの最強食材とは? 腸と腸内細菌の秘密

今や健康を語る上で「腸」は欠かせない。「太りやすさや糖尿病などの生活習慣病、認知症との関連を示唆する研究はもとより、新型コロナ感染症の重症化にも腸内細菌が関与するという報告もある」と京都府立医科大学大学院医学研究科の内藤裕二教授はいう。
「明らかなのは、腸内細菌叢(さいきんそう)は多様性があるほうがいいということ。そして、腸そのものが健康であることももちろん重要だ」と内藤教授。栄養不足や加齢で、腸の内側を覆う細胞層に隙間ができると、体内で炎症を引き起こすような有害物質が侵入しやすくなるからだ。

では、腸を“いい状態”に保つために我々ができることは?
その最たるは食物繊維をしっかりとること。調査でも、食物繊維の摂取量が少ない人ほど、がん発症率や死亡リスクが高いことがわかってきた(下棒グラフ)。
特に、腸内細菌がエサとして利用できる”発酵性の食物繊維”をたくさんとるといいようだ。腸内細菌が食物繊維を発酵すると、腸の中で酢酸や酪酸、プロピオン酸といった短鎖脂肪酸という物質が増える。「短鎖脂肪酸は、腸管上皮細胞を覆って異物の侵入を防ぐ粘液(ムチン)層の強化に役立つ」と内藤教授は説明する。

令和元年の国民健康・栄養調査(厚生労働省調査)では、食物繊維摂取量は成人男性1日当たりの中央値で18.9g、成人女性17.1gと目標量(*1)に近づいている。だが、大妻女子大学家政学部食物学科の青江誠一郎教授は、「生活習慣病の発症予防などの観点から見ると、男女ともに本来1日24g以上。できれば1000kcal当たり14g摂取するのが理想」という。
では、なぜ目標量を24gに定めなかったのか。「目標量を検討した平成27年当時は、実際の摂取量がもっと少なかった。そのため、いきなり大幅に増やすことは現実的ではないとの判断から、間をとって現在の男性21g、女性18gとしたにすぎない。目標量に達したから今の量で十分と思わず、さらにとるように心がけて」と青江教授は説明する。
